| 521 | 宮本顕治論 | 第9部 | 査問事件/「公判記録」宮顕陳述の逐条検討 |

| さて、一応最終章「われらは抗議す」を除き読み終えたので、以下公判廷における宮顕の特に異な気な陳述を整理する。まだまだ省略.削除されたところもあると思われるので全面的にとはいかないが、それでも書ききれないほど充分な変態弁明をしている。 |
| 公判陳述 | P | 記載内容と疑問点 |
| 第1回 | 27 | 「それは警察のスパイとしての明白なる正体をもって居る大泉兼蔵の陳述が基礎となり」。
(疑惑)これも嘘である。基礎となっているのは、袴田陳述である。各被告の調書が明らかになっていない時点では、この宮顕の弁明も本当らしく聞こえるが、今や平野本他で各被告の陳述が漏洩されており、嘘であることが明白となった。 |
| 第1回 | 28 | 「被告人達が党活動中、大泉、小畑等に対し個人的感情、ないしは悪感情をもっていて、野呂の検挙を奇貨としてそれを動機口実にしてスパイとして彼らを査問に附し、殺害せんとしたような解釈をやっていますが、しかしこれは勿論根本的に誤っていることはいうまでもありません」。
(疑惑)少なくとも、小畑までをスパイとしてその摘発闘争であったと云う言い分よりは的確であろう。実際は、私論によれば、真性スパイ派宮顕系による労働者派小畑派の殲滅戦であり、党中央簒奪劇であった。 |
| 第1回 | 28 | 「大体私が麹町警察署に検挙された時に、私を調べんとした山縣警部は鈴木警部等とテーブルを囲んで曰く、『これは共産党をデマる為に絶好の材料である。今度はこの材料を充分利用して、大々的に党から大衆を切り離す為にる』と言って、非常に満足したような調子で、我々に冷笑を浴びせていた」。
(疑惑)ここは重大な疑惑のあるところである。宮顕の口から、検挙された時既に小畑が殺されていたことを特高が知っていたと明らかにしている。これは一体どういうことなんだ。この時小畑の死体は床下に埋められており、翌年の大泉の逃亡に拠り知られることとなったというのが史実きである。ところで、私は、宮顕逮捕時点で特高が小畑死亡を承知していたことは事実であったと受止めている。ということは、小畑殺害経過に付き、特高が知っていたということになる。誰が知らせたのか、いうまでもなかろう。宮顕その人であると私は推理している。小畑殺害の前夜と殺害後暫くしての二度、宮顕は「ちょっと出かけて帰ってきている」。行く先は陳述していない。検事も聞いていない。この時が事前事後報告であったと私は睨む。 |
| 第1回 | 29 | 「しかし自分はテロによる訊問のため、警察においては陳述を拒否してきた」。
(疑惑)前の続き文がこの下りである。つまり、前の文章は、宮顕に拷問が為されたことを脚色しようとして接続されていることが判明する。しかし、その為にあまりにも重大な秘密を漏らしてしまっていることになる。私は、宮顕には拷問が形ばかりしか為されていないと見なしている。なぜ分かるのか、それは物書きのはしくれの勘である。その様は追ってみていくことにする。 |
| 第1回 | 29 | 「逸見の供述は、党に対する反発的意図から自分たちに対し誹謗的態度をもって陳述している」。
(疑惑)私はそうは思わない。もともと小畑に近い位置にいた逸見が丸め込まれて小畑殺害に手を貸した。その取り返しのつかない痛苦な反省から、もっとも忠実に事実を陳述していると思う。それを証左できるが、長くなるのでここでは以上のコメントとしておく。 |
| 第1回 | 33 | 「『出刃包丁を突きつけて白状すれば助けてやる』とか『マキ割を持って乱打した』とか、あるいは『腹部に炭火を押し当てて』とか、その他いわゆる暴虐と思われる印象を与えることを書いていますが、これらは全く事実に反するものであります」。
(疑惑)ここまで白を切るのなら、大泉.小畑を縄で縛り猿轡をかませ頭覆いまでしていたことまで否定すればよかろう。後述するが、それは認めている。以降の取り調べでマグロ状態の2名に手出ししなかったのであれば、そもそもそうした形態で取り調べをせねばならなかった理屈がおかしかろう。 ちなみに、こう言い切っているのは宮顕だけである。もっとも、宮顕のこの陳述はそれぞれねじ曲げているところが宮顕らしい。正確にはこうなる。『出刃包丁か何かまではわからないが、白状すれば助けてやるといったのは事実』、『マキ割を持って乱打した、こんなことは誰も言っていない。大げさにフレームアップさせて否定するという下司な話法である』、『腹部に炭火を押し当ててのここはその通りである。他にも硫酸瓶から液をしたたらしたとあるがこれについては意図的に触れていない』、つまり微妙に歪曲させてそれを否定することに拠りそもそも何もなかったことにしようという詭弁話法である。 |
| 第1回 | 34 | 「アジトその他において警察署の許可を受けず且つ正当の理由なくして実包数発を装填せる拳銃一挺を携帯し、とあります。大体この共産主義者が拳銃を持つのは自衛上の為であります」。
(疑惑)ここで、このたびの査問に宮顕が拳銃を持って臨んでいたことを当人が自認していることが分かる。その理由は、査問の脅し用ではなく、自衛上だと言う。この時拳銃を持ち合わせていたのは、宮顕と袴田と木島である。他の者は持っていなかったが、これはどういうことだろう。ちなみに、自衛の為であれば、宮顕の検挙時に拳銃を持ち合わせていなければ辻褄が合わない。そのときは、「今日が最後だ」という不思議なメッセージを残して荻野に会いに行っている。何と!荻野は前々からスパイと割れていたと除名理由で述べられている人物であるにも関わらずにだ!。 |
| 第1回 | 34 | 「鈴木という警部ですが、これが自分の所にも来て拷問を指揮しつつ『お前も岩田、小林の如く労農葬をやって貰いたいのか』といっていたが」。
(疑惑)検挙当日の話だと思われるが、要は、拷問されたということをこういう文章からも補強しようとしているということだ。私には、作りすぎた話のように聞こえる。なぜ分かるのか、それも物書きのはしくれの勘である。 |
| 第1回 | 36 | 「党としては、中央部にいる人を査問に附する場合は、あるいは中央部全体でやるが、下部組織の人間をただ一応調べてみるという場合は、その組織を担当している直接の担当者が、中央部の担当者と話し合いの上処理しえるのです。従って、西沢の査問のため中央部の会議にかけるまでの手続きをとる必要はないのであります」。
(疑惑)ここでいう西沢の査問とは、党印刷局員大串査問事件のことを言う。小畑リンチ事件の前々日、宮顕と西沢の謀議で為された査問であるが、ここに宮顕の無茶苦茶な組織論が展開されている。当時ほんの僅かになっていた最中で踏ん張っていた党員の査問に対し、「その組織を担当している直接の担当者が、中央部の担当者と話し合いの上処理しえるのです」と言う。 公判でスパイ闘争の意義をとうとうと述べているが、実際の査問はこのような経路で為されることを宮顕自ら白状している。して、「中央部の担当者」とは宮顕でないという。袴田も知らないという。逸見はこの種のことに関係するタイプではない。小畑、大泉もスパイ闘争に積極的でないと問題にされていたほどの御仁である。となると宮顕以外いないではないか。その宮顕は、否認しつつ「中央部の会議にかけるまでの手続きをとる必要はない」と西沢の査問を庇っている。宮顕得意の目くらまし話法である。 |
| 第1回 | 44 | 「この事件は彼逸見のいうごとく、個人的感情や個人的対立関係によって、提起されたものではなく、その文献を読めば明白なる如く、党によって義務づけられているところのかかる方針に基づいて提起されたものであります」。
(疑惑)ここで肝心なことは、宮顕が逸見の陳述批判を為す必要があって、当時の逸見のそれを自ずと明らかにしていることである。今日なお逸見の陳述調書全容は発表されていない。しかし、宮顕の反論によって、どこが食い違っていたのか自ずとしれることになる。もっとも反論できなかった為の食い違い個所も他に多多あるとは思われる。ここでの食い違いは、このたびの査問事件が宮顕派による小畑派の党内対立から引き起こされたものであって、小畑=スパイ説に逸見は立っていないということが知れることになる。 |
| 第1回 | 44 | 「こうして党がこの問題を取り上げたのは、既にその前年においてスパイ松原が全協に入り種々策動し」。
(疑惑)ここも貴重な陳述である。宮顕が「スパイ松原」闘争を指揮し、この公判でも得々と語っているが、松原氏がスパイでなかったらどういうことになるか。まして松原氏は党員でもなかったとしたら。松原夫婦は身の潔白を訴え続け、この問題で終生悩み自殺まで考えてきたとことが、今日立花氏の研究で判明している。どういうことになるのだろう。宮顕の人をその気にさせる詐術の裏でこういう被害者がいることが知らねばならない。 |
| 第1回 | 45 | 「ところで逸見の上申書を見ると、当時党はスパイに対して無定見であったといっておりますが、こういう文献を読んでいる限りスパイに対する闘争方針は、明確に規定づけられているので」。
(疑惑)ここも大事な陳述である。党中央委員といえば5名しかいなかった最高幹部である。その一人であった逸見が、「スパイに対する闘争方針」に宮顕が言うが如く中央委員会の総意があった訳ではないと陳述していることになる。これは事実であった。小畑.大泉.逸見は少なくなった党員の再結集に懸命であった。この時宮顕グループはスパイ摘発闘争に血眼になっていた、その標的は党の有能党員、将来性豊かな青年党員、戦闘的大衆団体であった。宮顕グループの方がスパイ集団であり、「スパイに対する闘争方針」を掲げて党内撹乱をしていたというのが真相であろう。 |
| 第1回 | 46 | 「例えば、大泉の如きも松原の査問という党の方針に対し、全くスパイ挑発の問題を全然認識していないような態度をとり、その後も方針を忘れたようにけろりとし、」。
(疑惑)ここも貴重な陳述である。饒舌している宮顕は、大泉のいい加減さを際立たせる為に陳述しているのであるが、逆に反宮顕系の大泉恐らく小畑、逸見らが「松原の査問という党の方針に反対ないし無関心」であったことを告げていることになる。しかも、松原が一貫してスパイでもなく党員でもなかったことを考えるとどういう意味になるか、宮顕らの、「対スパイ闘争」に狂奔する姿勢のみが浮き彫りになってくる。 |
| 第1回 | 47 | 「しかし、当時においては何ら逸身のいう如き原因で、ブロック的対立関係があろう筈がなく、」。
(疑惑)ここも貴重である。先の「党中央委員間の個人的感情や個人的対立関係」は「ブロック的対立関係」としてたち現れていたと逸見が陳述しているのが知れる。当然、小畑−大泉ブロックと宮顕−袴田ブロックであり、逸見は小畑寄り秋笹は宮顕寄りという関係にあった。ちなみに野呂委員長は小畑寄りであったようである。その逸見が取り込まれた様子は袴田、秋笹陳述に詳しく述べられている。 |
| 第1回 | 48 | 「『赤旗号外』等を見ても、彼等に対する党の処置としては除名を宣告し、除名が最高であることを明確に立証しているのであります」。
(疑惑)宮顕の典型的な子供だまし話法がここで述べられている。「スパイに対する処置は除名」であるという結構な物言いをしているが、やってることは皆激しい暴力と陰険な恫喝ばかりであったというのが史実である。現実を知らない者はこの物言いにごまかされる。しかし、この物言いも実にええ加減である。赤旗号外に「除名が最高である」ことが「述べられ」ているが、それはそれだけで何も査問に暴力が伴わなかったことまで「立証」する力はない。こういう「言い回しフェチ」の部分も宮顕の特徴である。 |
| 第1回 | 51 | 「小畑の死亡を奇貨として、党のスパイに対する処分は殺害であるかの如く歪曲されて、大衆に極めて誤った印象を与えておるのであります」。
(疑惑)ここも考察を要するところである。当時の共産主義運動内にスパイの摘発と場合による死の処分まであったことは数々の裏付け資料がある。しかし、スパイの処分=殺害ではない。この違いを無視して、スパイの処分=殺害説を否定することに拠り、このたびの小畑死亡に関しても無関係を引き出そうとしている。それは詭弁というものであろう。 |
| 第1回 | 53 | 「従って党の査問を開始するに当たって、党として決定したことは、彼等はスパイとしての如上の嫌疑があるから、これを査問に附するということだけであって、査問に当たってテロを用いるとか、場合によっては殺害するというようなことは、勿論問題になっていないのであります」。
(疑惑)査問事件のここが最大の問題点である。これを宮顕陳述の通り受止めるのか、数々の状況証拠からして逆にこの陳述の否定部分を更に否定して、「従って党の査問を開始するに当たって、党として決定したことは、彼等はスパイとしての如上の嫌疑があるから、これを査問に附するということだけではなくて、査問に当たってテロを用いるとか、場合によっては殺害するというようなことは、内々に合意していたのであります」と受止めるのかということになる。 |
| 第1回 | 54 | 「彼等は先ず日常活動についてのスパイとしての証拠をつかまれるや、その後はもはや自分は客観的にスパイと思われても仕方がないと、はっきり言ったのであります」。
(疑惑)ここが詐術されている。この陳述と以降の下りは大泉に関して述べられているところであるが、「彼等は」と述べることによって小畑も右同様視させている。「はっきり言った」も違う。大泉は自認したが、小畑は最後まで否認したというのが実際であったようである。実に、死亡したのは小畑であるのに、大泉の嫌疑を述べ連ねることに拠り小畑殺害を是認させていく手法を詐術と言わずに何と言おうか。 |
| 第1回 | 55 | 「彼(小畑)は、自分はその当時政治的水準が低かったからそういうことをやったのであって、自分としてはスパイではないがスパイと思われても仕方がないから除名は勿論承認する、と自白したのであります」。
(疑惑)厳しい査問の中で小畑が自認したのは以上の部分である。宮顕は、この自白を持って小畑がスパイであることを認めたといっているのだが、果たしてこの下りでそう受止めることができるであろうか。逆に、苦しさの中にあっても、頑として原則を譲らない、大泉のそれとは違う小畑の戦闘精神こそみえてくるように思われる。 |
| 第1回 | 56 | 「であるから、大泉のハウスキーパーであった為に、客観的にスパイを援助したということを煩悶して獄中で自殺した熊沢光子という婦人の『手記』を読んでみても」。
(疑惑)ここは、宮顕が饒舌のあまりトンデモなことを述べている下りである。果たして、他の被告で、熊沢光子の『手記』を読み得た者がいるであろうか、宮顕曰く予審調書作成に全て拒否し続けたという当の宮顕がなぜ読み得たのであろうか。熊沢ばかりではない、宮顕は他の被告の調書全てに目を通しているようである。以降適宜その様を宮顕の陳述で明らかにしてみたい。 |
| 第1回 | 56 | 「小畑は万世橋署に検挙された時転向を誓って釈放され、その後は高橋某警部と連絡をとり、党の情報を提供し、それによって30円ないし70円の報酬を貰っていたということを述べて、正真正銘のスパイであったことを自白したのであります」。
(疑惑)ここは大いに疑問のあるところである。これだけ聞くと、小畑がさもスパイであったらしく聞こえる。しかし、このように小畑が自白したというのは宮顕陳述のみであるという不自然さがある。つまり宮顕得意の詐術であるが、それにしても宮顕は小畑のこうした過去についてどこから情報を仕入れたのだろう。この情報こそ特高通ならでは知りえたことではなかろうか。なお、小畑と接触があつたとされている高橋警部なるものは万世橋署はおろか警視庁にも該当者がいんかったと立花研究が明らかにしている。つまり、小畑スパイ説の作り話臭いところとなっている。 |
| 第1回 | 56 | 「査問会場での小畑の死亡は、小畑が暴行あるいは逃走を企てて暴れた際、小畑の体質に基づく内因的急死として惹起されたもので」。
(疑惑)査問事件のここも最大の問題点である。何やら小畑が暴行と逃走を企てたと本末転倒の言い回しをしているが、小畑の死因につき、宮顕がここではっきりと「体質に基づく内因的急死」として陳述していることを確認しておきたい。 |
| 第1回 | 57 | 「このスパイに対する査問が行われ、そして中央部のスパイの巨頭が摘発されたということは、党にとっては画期的な党清掃の出発点となり」。
(疑惑)この言い回しにも、宮顕グループがスパイ摘発に狂奔していた論理が聞けるであろう、実際はこれが出発点となり、最終的に党中央が瓦解したという歴史性がある。 |
| 第1回 | 57 | 「袴田の如きは、昭和10年3月頃まで健在して、党内に発生した多数派と称する反革命的な分派に対する闘争を組織し、党の革命的伝統を守り、労働者階級の前衛党としての党の歴史を保ちえたのであります」。
(疑惑)ここの陳述も大事である。宮顕は、袴田の逮捕時まで党中央が維持されていたとみなしていることと、その過程で立ち現れた反党中央分派の方が多数派であったことを認めつつ、それとの戦いを擁護している点が確認できる。ちなみに、この時の多数派は小畑死亡事件の真相を明らかにせよと袴田党中央に迫っていた。つまり、当時の多数の党員が納得していなかったということである。むしろ、労働者派の小畑が正真正銘のスパイグループである袴田−木島ラインによってテロられたと指摘している。この呼びかけが次第に支持を得て多数派になったという経過がある。 |
| 第1回 | 57 | 「最後にこの査問の問題に関して、党があるいは日常闘争と離れてスパイ問題に狂奔していたという風に、予審終結等で表現しておりますが、」。
(疑惑)恐らく逸見の予審調書と思われるが、宮顕はこれに目を通していることが窺える。以下、宮顕の陳述はこの文意を否定しようとして「党の日常的闘争」の必要との相関関係につき饒舌しているが、いくら否定しようとも突出して「対スパイ闘争」の満展開を呼号していった事実はどうにもならず、苦しい弁明を強いられている。 |
| 第1回 | 58 | この後、宮顕と袴田と秋笹で、合同公判の必要を述べ合っている。意識的に逸見と木島がそれを避けようとしているかのように印象付けている。
(疑惑)事実は私にも分からない。もし、逸見が出てきたなら激しく食い違う陳述の解明にお互いが向かわねばならなくなったであろう。果たして、逸見のほうがそれを避けようとしたのだろうか。私には、裁判長の「逸見が併合を避けたいという希望をもっていたという点から考えてでたくないんじゃないかと思いますが‐‐‐」、「逸見がどうしても出てこなくてもその時やって‐‐‐」というわざわざの発言をしていることの方がやらせ臭く感じてしまう。 |
| 第2回 | 62 | 冒頭で逸見と木島大泉の合同公判拒否の経過が述べられている。裁判長は、逸見については、「どうしても出頭できないと家の人が使いに来たから」、木島については、「診断書が来ている。神経衰弱で今後2週間安静を要するという‐‐‐(笑)」、大泉については、「併合しない」と訴訟指揮している。
(疑惑)当時の司法制度で、被告の意思がこのように尊重されていたのかどうか、私には分からない。しかし、小畑死亡時の陳述でこれほど各被告に食い違いがあるというのに、真実解明の為の努力が為されようとしている風ではないように聞こえるのは私だけだろうか。印象付けとしては、宮顕.袴田.秋笹が望んでいるのに嘘の陳述している逸見.木島.大泉らがこぞって尻込みしている風な演出に成功している感がある。なお、大泉については「併合しない」との訴訟指揮も何やら臭い。やられた方の本人の出席をさせれば良いのに、「併合しない」方針のようであるとは変ではないか。 |
| 第2回 | 62 | 袴田の「この前の公判の時の他の皆の意見はどうでしたか」の質問に、裁判長は「それは訊(き)かない」とある。
(疑惑)この下りも変であろう。裁判長が合同公判、併合審理を望んでいるのなら、当然にも「訊いておくべき」であり、出席を促すべきではなかろうか。この遣り取りは、私の「やらせ演出説」(事情を知らない者、後世の者をたぶらかす為の作為的会話の遣り取り)を裏付けないだろうか。 |
| 第2回 | 63 | 「裁判長 だから分離されたいという希望を持っている者を無理に併せる必要はない」。
(疑惑)これが裁判長の訴訟指揮であった。えらい物分りが良いというか、これほど食い違う陳述の真相解明にえらく熱心でない姿勢が見えている。この下りも、私の「やらせ演出説」を裏付けていないだろうか。 |
| 第2回 | 66 | 「裁判長 然し出てこない者は仕方がない」、「袴田 令状を出したらいい‐‐‐(笑い声)」、‐‐‐「裁判長 とにかく出てこないから困る」、「袴田 裁判所としてもう少し何とか権限をもってやったら‐‐‐」
(疑惑)この掛け合い漫談は一体何なんだ!。今日共産党が言うような暗黒裁判にしてはえらいことが遣り取りされている。被告が、裁判長に対して堂々と逆訴訟指揮し得ている「世にも稀な民主裁判」ではないのか。 |
| 第2回 | 68 | 「裁判長 秋笹や袴田がスパイだということも言われるからね、(笑声)」、「秋笹 全体として逸見の云っていることが嘘か本当かということは、全体の真実を発見する上において大切なことで、逸見のいっていることでも、確かに事実に該当していて、袴田や僕が間違って云っていることもあるので、一概に逸見だけを否定することも問題です。だからやはり立ち合わせた上で、総合的に判断する必要があります」、「裁判長 立ち会ったところで効果が薄いと思う」。
(疑惑)この秋笹陳述は非常に貴重である。「逸見のいっていることでも、確かに事実に該当していて、袴田や僕が間違って云っていることもある」と云っている。当人は意識していないが、秋笹のこのスタンスは、目下「やらせ演出」中の公判には非常に具合の悪いものであろう。後に秋笹が執拗な拷問で発狂させられていく伏複がここにもあると私は見る。なお、裁判長の「立ち会ったところで効果が薄いと思う」発言は、裁判長自身が逸見らの合同公判を望んでいない態度をにじませている点で、この発言も貴重である。 |
| 第2回 | 70 | 「秋笹 ‐‐‐例えば共犯者の袴田が、『がんと殺つけてしまえ』と云ったとか、袴田が、『殺してもいいじゃないか』と云ったとか、あるいは又、宮本が、『殺せ殺せ』と、云ったと云いますが、全然そういうことは皆が認めていないのに、逸見自身が共犯者として認めているというようなことがあるので‐‐‐」。
(疑惑)ここでは驚くべきことが漏洩されている。今日でも逸見の陳述調書の全文は発表されていない。こういうところから推測していくしかない不自由さがあるが、袴田.宮顕らの陳述とは明らかに相違している様子がわかる。袴田の『がんと殺つけてしまえ』、『殺してもいいじゃないか』については、そういう言い方ではない冗談風に云ったことがあるかも知れないと本人が自認している。宮顕の『殺せ殺せ』の真偽は、この時秋笹は階下で用便していた際であるから秋笹自身には分からない筈である。つまり、逸見陳述による宮顕の『殺せ殺せ』発言は事実であった可能性がある。 |
| 第2回 | 71 | 「島田弁護人 分離して貰いたいです。逸見の言うのには、『自分は他の被告らが意見を異にしているから、一緒に審理してもらう必要も理由もないから分離してもらった方がいいのだ』と云っているのです」。
(疑惑)ここも貴重である。逸見が合同裁判、併合審理を希望していない理由について弁護人が答えているところである。演出過剰で逸見の欠席をなじっていくもんだから、弁護人はこの下りで、逸見が病気で出席しないのではないと理由を開示している。逸見が嘘の陳述をしているから併合審理に出られないとの袴田.宮本論調に対して、『自分は他の被告らが意見を異にしているから、一緒に審理してもらう必要も理由もないから分離してもらった方がいいのだ』とさりげなく反論している。つまり、逸見から見て、袴田.秋笹.宮顕らの主張の方が嘘であると云っていることになる。 この時逸見が合同公判に出席して真実を争おうとしたらどうなるか、それは当局のシナリオを崩すことになる。その道には、獄中の身に何が襲ってくるかわからない恐怖が待ち受けていたであろう、賢明な判断をしたように私は拝察する。付言すれば、それが判らなかった秋笹は執拗ないたぶりを受けて発狂死させられていくことになった。 |
| 第2回 | 73 | 「袴田 ‐‐‐病気で出てこないからば仕様がないが、転向しない被告らの前で言われるのが都合が悪いと言うのならば、彼の陳述が重大な意義を持たないという‐‐‐その点をはっきりしてもらいたい」、「宮本 弁護人の意見がどうあろうと、我々がこういう意見を持っているということをはっきりさせたい」。
(疑惑)結局、ここの下りが焦点の公判になっている。つまり、合同公判、併合審理を望んでいる宮顕.袴田.秋笹の方の弁明が真実であり、それを避けようとしている逸見らの方が虚偽であると素人を騙したいのだろう。 |
| 第2回 | 76 | 「袴田 ‐‐‐その中でも、最も重要なことを述べているのは逸見であり、次には木島であり、なおまた、我々にとって不利になるような点を述べているので、これはぜひとも出てもらってそういうことを明らかにして貰いたいと思うのです」。
(疑惑)ここで確認すべきは、逸見が「最も重要なことを述べている」且つ「我々にとって不利になるような点を述べている」ことを袴田が自認していることである。袴田らしいところだが、思わず本音を出している陳述であるように思われる。逸見陳述を、宮顕が云うように嘘とは云っていない。後半の「ぜひとも出てもらってそういうことを明らかにして貰いたい」は、云ってみるだけの演出であり、本当に出てくるとなったら大慌てすると私は窺う。 |
| 第3回 | 88 | 「プロレタリア作家であった小林多喜二は献身的に地下運動において活動中検挙され、数時間を待たずして死体となって警察署から運び出されたという事実があるが、これは当時労働者、農民の運動において最も献身的犠牲的行動をしていた者は、どういう運命に遭遇したかという点において最も歴史的のじけんなのであります」。
(疑惑)宮顕の宮顕らしい発言の最たる個所である。小林多喜二に対するこの陳述は正しい。ならば、小林は虐殺されたのに、それ以上の党内的指導者的地位にあった当の宮顕がのうのうと今法廷で陳述し得ている姿こそ変調であろう。「最も献身的犠牲的行動をしていた者は、どういう運命に遭遇したか」とまで云う視点をもっているのなら、小林のように虐殺されなかった宮顕自身の行動はどういうものであったが故に生き延びえたのか合理的に説明させて見たい。 |
| 第4回 | 102 | 「党は単なる小ブル的党と違って、これらの最も困難な歴史的課題を担うものであるから、強固な民主主義的中央集権が必要とされ、その為に党活動規律強化という事が不可分の必要となり、当時党が経営細胞の建設の問題を提起して、それにあらゆるカンパニア、あらゆる事件に対するカンパニアと結びつけて、絶えず党のボルシェヴィキ活動化と規律の問題を提起したのは如上の趣旨によるのであります」。
(疑惑)ここに典型的な宮顕の統制フェチぶりが語られている。「絶えず党のボルシェヴィキ活動化と規律の問題を提起した」と素性を自ら語っているが、この当時の党活動の実際に照らせば相応しくない提起であったことが分かる。確かに党内は混乱していたが、この当時為すべきことは残された連絡線の維持と発展、大衆化こそが肝要であった。宮顕らがやったことは、声だけ勇ましい「ボルシェヴィキ活動化」であり、「対スパイ闘争」の徹底化であった。しかも、狙われたのは党の有能幹部たちばかりに照準が合わされていた。 |
| 第5回 | 104 | 「4月下旬から資料の差し入れを手続き中だったのにそれが入らなかったのです。で、それでは陳述が不十分になるのでやむなく陳述を延期していたのですが、そして今回ももし入らなかったら支障をきたすので、一応延期願いをしておいたところ、ようやく昨日入ったのです」。
(疑惑)今日党中央から戦前の暗黒法廷ぶりが指摘されているが、この宮顕陳述によれば「上げ膳.据え膳」であったことが分かる。なお、宮顕のかような都合で法廷が開かれたり延期されていたことも分かる。他の被告の場合どうだったのだろう。 |
| 第5回 | 108 | 「階級運動にとってもっとも縁が深く、そして危険なのは党内に忍び込んで行うところの挑発でありまして、今日の秘密警察はただ単に共産党その他革命的組織内の情報を得ることを目的とするのみではなく、その手先を積極的に内部に入り込ませて、その根本方針を共産主義とは縁のない方向に向けてくるのであります」。
(疑惑)ここは御説ごもっとものところである。宮顕はかようなところまでなぜ詳しいのだろう。この当時これだけの認識で「対スパイ闘争」の意義を確認し得ていた者はいない。単に売られた−売ったの関係でスパイを摘発しようとしていた時期である。宮顕の分析がかなり的確深いのは、映し鏡ではないかと思われる。しかし、内容ともども怖い話だ。 |
| 第5回 | 110 | 「その後スパイの歴史の中で有名なのは、いわゆる全協に忍び込んだスパイ松原---この男はスパイとしてはかなり手腕家であって、単に一つの階級的組織に打撃を与えるにとどまらず、大衆団体と共産党との対立を政策的に惹起せしめようとする方針をもくろんだのであります」。
(疑惑)ここは立花氏によって研究が為されているところである。宮顕の陳述は、額面どおりに受け取ればそのようになるという巧妙なところに特質がある。問題は、かくも断定的に云われている松原氏とは実際にはどういう人物であったのかということにある。立花氏の調査によれば、全協の将来性が期待されていた戦闘的な青年労組員であり、党員ではない。ましてスパイであったとは身に覚えのない濡れ衣であると強く抗議しており、当時の関係者で照合した結果松原氏の冤罪が証明されたいきさつが書かれている。とすれば、この宮顕陳述の犯罪性こそ指弾されねばならないことになる。ということで、この宮顕陳述は云いたい放題の垂れ流し論理であることが知れる。 |
| 第5回 | 118 | 「左翼の運動が新聞の上でちやほやされるという時期のファン的な気分によって結びついた分子は、ちょっと警察に留置されただけで、元々理論も実践もないのであるから、このたび出てから情報を提供するというような約束を結ぶことによってスパイとしての第一歩が始まるのであります。そもそもスパイの多くは、彼等がその素質において薄弱であったところの者がテロによって威嚇され、さこに生じた関係によってその第一歩を開始することが最も多い現象として見られるのであります」。
(疑惑)ここも御説ごもっとものところである。宮顕はかようなところまでなぜ詳しいのだろう。えらい見てきたような事情通であることが知れる。以下も、一寸では知れない内容を綿々としるしている。 |
| 第6回 | 121 | 「裁判長 分離して審理してくれと言うのか---」、「宮本 あれが何時出たか分からない---」
(疑惑)ここは前後の文章を見ても何の遣り取りか分からない。云えることは、どうやら宮顕が婉曲に分離公判を望んでいることを主張しているようである。逸見が出てくるのかどうかを気にしている様が窺える。この時点まで、宮顕は一向に事件の核心を陳述していない。おかしなことである。 |
| 第6回 | 123 | 「32年6月にはスパイ松原が挑発活動をやっていたことが暴露され、除名を受けたのであります」。
(疑惑)ここでも松原氏について言及している。これほど幾度もスパイ松原と名指しされた松原氏が党員でもなくスパイでもなかったとしたらことは公党としての責任問題にまで発展して然るべき問題ということになるであろう。一刻も早い党としての調査と冤罪であれば名誉回復措置が為されてしかるべきであろう。 |
| 第6回 | 123 | 「赤旗123号において、『プロパカ−トル並びにプロパカ−トルと行動を共にして党規を紊乱したる者に対する処分の決定』が発表されているのでありますが」。
(疑惑)この「プロパカ−トルと行動を共にして党規を紊乱したる者」にまで処分の累を及ぼしていく「宮顕式対スパイ闘争」の有害性は多言を要しない。恐るべきは、常に判定者は宮顕であるという戦前−戦後−今日までの一貫した系譜がある。この論法で何人、何十人、何百人数が葬られたことであろうか。 |
| 第6回 | 124 | 「もし党内において疑わしき人物がおった場合は、所属の党機関に通告しなければならない。それ以外には何人に知らせてもいけない、確認されたスパイ、プロパカ−トルに対しては大衆の面前で無慈悲的に断罪することが必要である。---従って、彼等の挑発を双葉のうちに刈り取る為にはボルシェヴィキ的自己批判のやりはなしにとどめないで、組織的解決に努力することが大切である」。
(疑惑)何やら今日的にも通用している組織論である。この一切の元締めに宮顕が君臨している訳で、いかにも好都合な仕掛けをしようとしているではないか。「双葉のうちに刈り取る」は既にこの頃からの言い回しであることに驚かされよう。そしてこの認識の仕方そのものが、特高のアカに対する取締観と通底しているである。 |
| 第6回 | 141 | 「党活動の方針は決定されるまでは充分協議されなければならないが、一度び決定されたならば、それが各党員に対して義務付けられるのであります。従って、多数の決定に対する無条件服従、その決定の責任ある遂行は党活動の根本条件となるのでありまして、とかく党員の中には決定を忠実に遂行せず、党の決定をサボるような分子が見出されるのであるが、これは党活動に対して重大なる妨害となり、結局スパイは挑発者の煙幕の役割を果たすものであります」。
(疑惑)これが戦前も戦後も宮顕の常套的な組織規律論である。その弊害は党中央に対する拝跪であり、党中央の暴虐な統制の甘受を生む事にある。「一度び決定された」ものであっても、刻々変化する情勢に合わせて対応せねばならぬことを思えば、個々の党員の自主的理論形成能力を高める手段こそ根限り育成せねばならないという組織規律論こそ肝要ではないのか。宮顕論法に騙されてはいけない。 |
| 第6回 | 141 | 「なお、日常活動において党員に対して要求されることはいわゆる私生活の厳格さであって、共産主義者は飲酒とか、あるいは性的堕落とか、その他党則に反するような行為は絶対すべきではなくして、日常生活における模範的生活者となることを、党の規律は要求するのであります」。
(疑惑)ここも宮顕の典型的な統制理論が開陳されている。云うことだけは立派なことを云うが、凡そ社会生活の一面化であり、これが実際に機能するのは下部党員に対してであり、自身の腐敗に対しては免責されているという仕掛けとなっている。なぜなら、下に対しては疑いを要請するが、上に対しては拝跪を促すからである。 |
| 第6回 | 144 | 「逸見の言う如く、はっきりした調査も為さず被疑者の部署を下して長い目でみているようなことは、結局スパイに党の組織を売り渡す為の手伝いをしているようなことになるのであります」。
(疑惑)この陳述から、対スパイ問題における逸見の姿勢が逆に見えてくる。逸見は、宮顕らのいうような意味でこれを重視せず、重要ポストから外して様子をみればよいのではないかと主張していたことになる。それは敗北しつつある党運動の現状を見据えた深い愛情からの示唆であり、宮顕らの「対スパイ摘発闘争」こそ危険な臭いを嗅いでいたのではなかつたか。 |
| 第6回 | 144 | 「党の最高の処分は除名であるということは、第一回の陳述で述べましたが」。
(疑惑)にも関わらず実際にはどう展開されたかが肝心なこととなる。これは宮顕の言語体裁フェチであって、きれいごとは隠れ蓑であって実際にやられたことこそが問わればならない。この実際例をも見れば、いけしゃぁしゃぁとこういう宮顕の厚顔は卑怯というより異常でさえある。 |
| 長い前置きが終わり、いよいよここから「小畑致死査問事件」の具体的陳述に入っている。以下、宮本陳述の逆を読むのが逆に読むのが真相になる。 | ||
| 第6回 | 151 | 「大泉、小畑に対する査問の動機について、私は、秋笹.袴田等とブロックを作って、大泉.小畑等と対抗したことはありませぬ。‐‐‐私等がブロックを作って両名を排撃せんが為に為されたものでありませぬ」。
(疑惑)つまり、党中央委員会は「宮本.袴田.秋笹ブロック」と「大泉.小畑ブロック」で対立していたということになる。この様子は、査問時の訊問でも厳しく咎められたていることからも分かる。 |
| 【再開公判】 | ||
| 第1回 | 152 | 「私等は、両名を殺す意思は全然ありませんでした。不法監禁について、私は不法監禁したとは思いませぬ」。
(疑惑)殺す意思がったかどうかははっきりしないが、官憲に襲われた時の逃亡のためという口実で宮顕と袴田がピストルを用意していたことは両当人が認めている。手下の木島グループは命令さえあればいつでも従う意思があったと弁明している。査問後の両人の処置について話し合いが為されていない等々を見れば、むしろ「おめおめと生かしては帰さない」決意であったことが判明する。不法監禁については、宮顕が云っていることは査問の合意があったから不法監禁にはあたらないという主張である。しかし、手縄.足縄.猿轡.覆いによる頭.顔隠しまでしていることを見れば不法監禁そのものであろう。こういう宮顕の詭弁に騙されてはいけない。 |
| 第1回 | 152 | 「死体遺棄について、小畑の死体の処置は党議に上す程のものではなく、同人の死は突然にしかも意思外の出来事であった為、我々は意外の感に打たれてこれを埋葬してやろうと思っても、正式に埋葬する事が出来なかったので、結局家屋管理者であった者が最も手近な方法として埋葬したに過ぎない故に、遺棄したものではありませぬ」。
(疑惑)この宮顕陳述に憤然を覚えない者がいたら異常である。醜悪の極みが饒舌されている。「死体遺棄について、小畑の死体の処置は党議に上す程のものではなく」という党の最高幹部がおのれらの査問中に死亡したにも関わらず、この言い草は何だ!。「埋葬してやろうと思っても」ではないだろう、深く哀悼して埋葬させて頂かねばならないと考えてというところではないのか!。「結局家屋管理者であった者が最も手近な方法として埋葬したに過ぎない故に」だと!。この時の最高幹部は宮顕と逸見である。人のせいにせず的確な指示こそ為さねばならない状況であろう。それを秋笹にさせて、自分は免責だと!、馬鹿も休み休み言いたまえ。「遺棄したものではありませぬ」だと!。ならば、どういう状況であれば遺棄したことになるのか説明してみたまえ!。 |
| 第1回 | 152 | 「終結決定書(三)の事実は、西沢が大串を査問したいと言ったので、自分が承認したまでで、その結果については何ら考えておりませんでした」。
(疑惑)西沢による「大串査問事件」は「小畑致死査問事件」の直前の査問である。これにも宮顕の関与ないし指示が認められるが、この逃げ口上は何だ!。「その結果については何ら考えておりませんでした」とは、先の公判でとうとうと「対スパイ摘発闘争」の歴史的意義を述べた厳格峻厳さに比べて、その実行のされ方がえらい杜撰なそれであったことを自認していることになる。 |
| 第1回 | 153 | 「左様な雰囲気を作ったというのであろうが、赤旗号外は個人的テロの扇動を為したものではなく、左様な状態を現出せしめたことは全然ありません」。
(疑惑)ここも逆に受け取ればよい。赤旗号外は個人的テロの扇動を為し、左様な状態を現出せしめる契機となった。大沢、波多然査問事件を誘発していった。号外の文句については後で確認することにする。 |
| 第3回 | 163 | 「その後松原は全協と党との離反対立を挑発し、大森の銀行襲撃事件では松村は党から確認されていなかつた為、その下にいた百瀬を党は挑発者として除名したのである」。
(疑惑)ここでも松原氏がスパイとして挙げられている。 |
| 第3回 | 164 | 「荻野が著しい例であるが、スパイたる事を隠して活動し、検挙されてからも捏造的陳述を為して仲間を不利な状勢に置くかんとする活動である」。
(疑惑)この荻野と宮顕との間には因縁浅からぬものがある。宮顕が指導していた東京市委員会の中で宮顕派になびかずむしろ小幡派と近い関係にあった。古くからのスパイであったと断定され除名文が載せられているが、要は宮顕のイエスマンであったかどうかが重要な物差しとなっているに過ぎない。 |
| 第3回 | 165 | 「その後党は熱海事件の苦い経験に教訓を得て、1933年(昭和8年)1月中央部で初めてこの問題を取り上げ、系統的組織的に対処することになった」。
(疑惑)この陳述も貴重である。33.1月の中央委員会会議で正式にスパイ対策問題が取り上げられたと当人が証言していることになる。そうなると、この時以前のスパイ摘発闘争は黒幕宮本の私的活動ということになる。ちなみに、この会議で小畑.大泉らは積極的な関心を示さなかった。むしろ、宮顕の党内闘争の道具として使われることを危惧していた風がある。 |
| 第3回 | 167 | 「除名は党組織の最高の処分である。党としては、かような者を殺す必要は絶対にない。また党としては除名以外に何ら採るべき手段はないのである」。
(疑惑)既述したが、こういう書き方にも関わらず、実践的に何をしたかが問題であろう。 |
| 第3回 | 168 | 「これに反した見解があるが、それは水準が低い為で、逸見らの云うことは違っている。結局、党が強化されておれば、スパイが潜入すれば直ぐ判るのである。大泉.小畑らは党のスパイ対策が向上されていたのを知らず、依然スパイとして活動していて、遂に発見されたものである」。
(疑惑)あらら、宮顕を除く党の中央委員全てが否定されている。これで党内の「対スパイ闘争」を行っていけば、宮顕派しか生き残れないことになる。まさに党中央簒奪劇を自認した陳述となっている。 |
| 再開公判第4回は、「本日は、小畑、大泉両名に対する査問の経過に付き申し述べます」から始まる。いよいよ本番に入ったことになる。 | ||
| 第4回 | 172 | 「野呂が検挙されてから後委員会を改組し、逸見を責任者とし被害状況を明らかにする任務を与えた。なお、当時党内の一般大衆からも上申書の形で疑問人物の申告や、適当な対策を採るよう進言してきた。その上、上申書で最もスパイの摘発者としての嫌疑を受けたのは、小畑.大泉両名である」。
(疑惑)いきなり随分な虚偽陳述していることになる。記録から見る限り「逸見を責任者とし被害状況を明らかにする任務を与えた」という事実はない。「党内の一般大衆からも」という物言いも変調である。党内の下部党員=一般大衆という宮本の認識の仕方の傲慢性が見て取れる。「上申書で最もスパイの摘発者としての嫌疑を受けたのは、小畑.大泉両名である」も記録に合致しない。大泉に対してはそういう事実があるが、小畑に対する上申書が同程度あったとは虚偽である。何とかして大泉のスパイ性から小畑をも巻き込んで同一視させようとしている作為が見て取れる。 |
| 第4回 | 174 | 「両名はスパイとしての嫌疑は充分あったので、両名を査問することは組織的に提議されたのである。即ち、当時白テロ調査委員会が設けられていて、逸見が責任者、秋笹、袴田はその委員であったが、袴田は両名をスパイだと主張し、逸見は小畑がおかしいと主張した」。
(疑惑)ここも歪曲陳述である。「白テロ調査委員会」などという用語も変な委員会がつくられた訳がない。宮顕を黒幕として袴田−木島の私党グループが謀議を凝らした上で、秋笹.逸見を巻き込んだというのが実際であった。「逸見は小畑がおかしいと主張した」も不正確な記述である。この辺りのいきさつは袴田陳述が伝えており、正確かと思われる。 |
| 第4回 | 175 | 「従って、この査問は派閥的闘争に基づくものでないことはもちろん私怨を晴らす為行われたものでもない」。
(疑惑)この陳述の否定を肯定にすれば良い。「派閥的闘争と私怨を晴らす為」査問が行われたと理解する方がまだしも正確である。真実は、正真正銘のスパイグループ宮顕派による労働者派小畑の掃討戦であった。 |
| 第4回 | 175 | 「査問の方法に関しては、予定表を作った。その予定表は検挙当時私が所持しており証拠品として差し出しておる」。
(疑惑)ここも非常に臭い陳述個所である。宮顕は荻野に会うために出かけたところを逮捕されたとされている。この時「今日が最後だ」との不思議な言葉を残して出向いている。荻野に会う時にこの「訊問予定表」を持参していた必然性がない。まして、大泉の手帳も行方が杳として知れない。この辺り不自然であろう。 |
| 第4回 | 175 | 「小畑、大泉の両名は党の中央委員であるから、中央委員は査問に付するには総会にかけねばならず、従って組織の規定に従い正当な組織的手続きとして総会を開いて、査問は決定したのである。逸見は、この点に関し、総会の事は知らなかった、いきなり連れて行かれたらそれが総会となったと述べているが、左様なことは断じてない。彼を除外しては総会はやれないのである」。
(疑惑)ここは詭弁が多い。「総会」なぞと仰々しく云っているが、総会の構成メンバーの主要な二人を摘発査問する為の「総会」であり、残るメンバーは宮顕.逸見.袴田.秋笹だけのことである。「正当な組織的手続きとして総会を開いて、査問は決定した」などと言うほうがこがましい。むしろ、逸見の言うように「いきなり連れて行かれたらそれが総会となった」というしろものでしかない。総会という言葉が適切かどうか疑問も有るが。ちなみに「彼を除外しては総会はやれない」は、答えになっていない。 |
| 第4回 | 175 | 「又逸見は宮本に引っ張られてやむなくやったと述べておるが、これも違う。左様なことはない。逸見が査問に反対したようなことはなかった。むしろ、小畑に対する査問を積極的に主張していた」。
(疑惑)ここも逸見のいう「宮本に引っ張られてやむなくやった」の方が正確で、「左様なことはない」との宮本陳述が虚偽の主張をしているとみなす。袴田、秋笹の陳述はいずれも逸見陳述を裏付けている。 |
| 第4回 | 175 | 「また査問を公表する以上殺害という問題など起こりようないことである。従って、使用すべき器具に関することなど総会では問題にならなかった。ただ暴れるかも知れぬから、紐ぐらいは用意したほうがよいというぐらいであったか、威嚇用の器具のことなどは全然問題にならなかった。見張りをつけることは決定された」。
(疑惑)「紐ぐらいは用意したほうがよいというぐらいであったか」という言い回しは、紐については否定できなかったということである。威嚇用の器具については袴田一任ということで謀議されているので「総会」でいちいち吟味した訳ではない。いわゆる詭弁がここでも見られる。 |
| 第4回 | 176 | 「先ず小畑を連れて行き、二階へ上がって直ぐ同人を制縛し、査問を開始する旨言うと、小畑は顔面蒼白となり、しまったという態度になり、哀願的態度をとり、一向憤然として無実の罪であるという様子を示さなかった」。
(疑惑)さて、いよいよ査問開始シーンに入る。このようにして小畑は縛られた。ここには書かれていないが、ピストルを突きつけて大人しく査問に応じるよう云い渡ししている。誰でも蒼白になるであろう。ところで、ここのところの記述が戦後の「スパイ挑発との闘争」(月刊読売.1946年3月号)とは違う。公判ではこのように自身が陳述しているが、「スパイ挑発との闘争」では宮顕は大泉を連れて行ったことに手直ししている。こういうことの勘違いが果たして許されることだろうか。 |
| 第4回 | 176 | 「次に、彼等が査問を破壊する行動に出るかも知れぬので、査問を平和裡に行うには仕方がないということで、彼等の手足を拘束し、まず大泉から予定表に従い訊問を開始した」。
(疑惑)手足を拘束した様は、された方の大泉が明らかにしており、それによると手と足を後ろ側に括り背中で結んでいた。つまり逆エビ状に捕虜同然の姿にされていた。「まず大泉から予定表に従い訊問を開始した」は他の被告の陳述と整合しない。他の被告のそれでは小畑から先に査問されている。宮顕のこの偽証は意図的であるが、何のためにというなら、このたびの査問が小畑の査問にこそ主眼があったことを隠蔽しようとして出鱈目をいっていることになる。 |
| 第4回 | 177 | 「宿所の捜査は木島に担当させ、これも総会の決議によるものである。自分が勝手に木島にやらせたのではない」。
(疑惑)ここでの「総会」表現の使われようによって、宮顕の云う「総会」の実態が明らかになる。宮顕.逸見.袴田.秋笹の4名の謀議のことを「総会」といっていることが判る。 |
| 第4回 | 178 | 「その夜更け、逸見、袴田両名は連絡があるとて帰り、私はちょっと外出して帰って同所へ泊まり、熊沢を訊問したところ、」。
(疑惑)逸見の足取りは割れている。全農の宮内等に査問の状況を報告している。宮本が「ちょっと外出して」何をしたのか明かされていない。臭いところである。袴田も帰宅したとあるだけで、他の党員との接触の様子はない。予審判事も聞いていない。おかしなことである。 |
| 第4回 | 178 | 「小畑に関しては、郷里へ帰ったこと、彼が万世橋署の高橋警部に活動をおごられた際情報提供を約束し、その後金を貰い連絡をとっていたということ」。
(疑惑)この宮顕陳述を真に受ければ小畑はスパイとなる。しかし、実際は小畑はスパイでないと頑強に否認している。高橋警部の話は宮顕の作り話臭い。立花氏の研究によると、万世橋署にも警視庁にもその他の暑にいても該当人物はいなかったことが判明している。それとこの話のうそ臭いところは、小幡は党の金の融通がしやすい立場に位置しており、特高から金を貰わなければならない状況には一貫してなかった。わざわざ小畑がはした金を貰わねばならない根拠がない。つまり、作り話だということになる。 |
| 第4回 | 179 | 「小畑は大泉をスパイであるといい、大泉は小畑がスパイであると主張したこと等により、」。
(疑惑)この陳述通りにお互いがスパイ呼ばわりした時点が明瞭でない。恐らく事実で、査問初日の当夜であると推測される。 |
| 第4回 | 179 | 「この間の状況を予審終結決定では、大変誇張して表現しているが左様なことは更にない。非合法行為であるから周囲に気兼ねし、できる限り静かに査問しなければならなかったし、その上近所に警官の住居があると言う木島の注意もあったので、できるだけ静かに音がしないように行った」。
(疑惑)ここではかくも用意周到に査問が執り行われていた様を窺うことができる。「その上近所に警官の住居があると言う木島の注意」は臭いところである。事実、そういう場所の只中で秘密裡に査問が進行していたのではなかろうか。 |
| 第4回 | 179 | 「ただ小畑が逃げようとして暴れた時、ちょっと騒いだくらいである。従って、決定書に書いてあるようなことはできる訳がない。この点に関する逸見の供述は相違している」。
(疑惑)前段のこの言い方も不謹慎極まりない。後段の「この点に関する逸見の供述は相違している」も何も、逸見は現場であったことを語っている。逸見が自身も不利になることをわざわざ虚偽陳述せねばならない必然性がなかろう。 |
| 第4回 | 179 | 「逸見、木島の陳述は迎合的である。硫酸をかけたり、炭団(たどん)を押し付けたりしたことはない。自分は静かに訊問しただけである」。
(疑惑)結局宮顕一人が「静かな査問」ぶりを陳述していることになる。では、他の被告達はなぜ自身を不利になることを敢えて述べようとしたのか。特高が何とかして宮顕を落としこめようとしてそういう陳述を誘導したにしては、宮顕のこのたびの裁判長との和やかな遣り取りと云い、とうとうと独演の許容された公判と云い、各資料の閲覧振りと云い何やら優遇されているのはどうしたことだろう。 |
| 第4回 | 179 | 「私は夜間徹夜で3名を一通り訊問し疲れたので、当日は木島と共に同所のこたつに入って寝た」。
(疑惑)袴田、逸見の帰ったあとで、宮顕が中心になって小畑.大泉.熊沢の3名を査問したことが自認されている陳述である。これは「総会」の打ち合わせにない査問であった。何かと規則にうるさい当人はどう弁解しているのだろうか、それとも宮顕の成す事はールマイティーなのだろうか。なお、査問した当人が「訊問し疲れたので」と云っているのに、された方の側には「疲れなぞなかった」という宮本の陳述に後で出くわすことになる。一体、宮本ってどういう人物なんだろう。 |
| 第4回 | 179 | 「同人(小畑)が押入れに入っていた時、壁に穴をあけ逃げようとしたので、座敷へだされたのである。大泉は座敷の真中へ転がしてあった。二人とも押入れから出してあった事に間違いない」。
(疑惑)恐らく小畑は押し入れ内で縄をほどこうと体をよじっていたと思われる。宮顕は、「壁に穴をあけ逃げようとしたので」と云うが、逃げられるものでもなかろう。なお、「二人とも押入れから出してあった事に間違いない」の陳述は貴重である。 |
| 第4回 | 180 | 「私が一眠りした時、物音で目を覚ますと、小畑は手足を自由になっていて起き上がろうとしていた。それに袴田が飛び掛って行き、逸見もそこへ来て、袴田は足の方、逸見は頭の方にいた」。
(疑惑)いよいよ小畑死亡時のシーンの宮顕流再現である。逸見の陳述との違いは、小畑押さえ込みに加わった順序が、袴田→逸見→宮顕.木島であるとし、宮顕の関与が最後にされていることである。逸見陳述では、袴田→宮顕→逸見→木島となっている。 |
| 第4回 | 180 | 「私も駆け寄って小畑の右手を小畑の横に座って両腕を抱きかかえる形で止めており、木島も来て向かい側で暴れる小畑の手を止めようとしていた」。
(疑惑)この陳述のポイントは、宮顕が「小畑の横に座って」と表現していることにある。他の被告の陳述は一様に馬乗りになって押さえ込んだ様子を明らかにしている。それにしても「両腕を抱きかかえる形で止めており」とは苦しい弁明である。暴れる小畑を「止める」には倍する力がなければ出来ないことは誰でも分かる。 |
| 第4回 | 180 | 「小畑は手足を動かし、声を立てようとするので、逸見は声をたてさせまいと口の辺りを押さえた。その時小畑は風呂敷か外套を頭からかぶせられていたが、そのまま暴れたので皆で小畑を押さえつけた。そのうちに小幡は声を立てなくなり静かになった」。
(疑惑)この陳述によれば、小畑の死因は逸見による窒息死を誘導しそうである。他の被告の陳述は、宮顕の背中からの押さえ込みを袴田.木島はそっと語り、逸見は露骨に語っている。これに対する宮顕の反論がこういう陳述であることを知る必要がある。なお、「その時小畑は風呂敷か外套を頭からかぶせられていた」とあるところは正確な陳述である。そのように被せられた上、外れないよう紐で括られていたようである。 |
| 第4回 | 180 | 「それで秋笹が人工呼吸をしたが、効果はなく、逸見が脈を取ったが既になかった。自分は柔道の手で活を入れたがそれもダメであった」
(疑惑)宮顕は、こういうところになると「柔道」を持ち出す。小畑.大泉捕縛時、査問の間中には「柔道」の技が使われなかった保障はない。 |
| 第4回 | 180 | 「結局我々としては、彼が騒ぎ出そうとしたので、取り静めようととただけに過ぎないのである」。
(疑惑)こういう言い方を怒りなくして聞くことができるだろうか。私は論評する気にもなれない。 |
| 第4回 | 180 | 「我々には殺意は全然なく皆は蘇生することを希望していたのである。特に蘇生に尽力したのは自分と秋笹の二人だけである。この点に関する逸見、木島の供述は相違している」。
(疑惑)私も、「殺意は全然なかった」と思いたい。「蘇生に尽力したのは自分と秋笹の二人だけである」とは何たる言い草だろうか。袴田の調書によれば、袴田もまた蘇生に尽力したと述べている。皆が自己の立場を有利にすべく競っていることになる。「この点に関する逸見、木島の供述は相違している」逸見.木島の陳述は、宮本が「殺せ、殺せ」と掛け声していたと陳述していることを指している。真偽は分からないというより、さすがに信じたくない。 |
| 第4回 | 181 | 「それから委員会は同家階下で今後の中央の方針等に関し協議した。組織分担、査問に関する事実を赤旗号外で発表することを協議した」。
(疑惑)ここは歪曲陳述されている。袴田陳述によれば、死亡した小畑の横たわるその場で「総会」が為されたとされている。その後で階下の食堂で続行した模様である。「中央の方針等に関し協議」と漠然と述べているが、袴田と秋笹を中央委員に、木島をその候補に任命し、宮顕の口から言い渡されたというのが真相のようである。 |
| 第4回 | 181 | 「しかし、死体の処分についてはなんらの協議はしない。そして私は24日同家を引き上げたのであるが、翌日夕方再び同家に赴いた時、小畑の死体を床下へ入れたということを聞いたのである。自分はその時皆にご苦労さんと云った」。
(疑惑)宮顕らしい嫌らしい言い方である。小畑の死体遺棄について関与していないということをいいたいのだろうが、無責任な言い逃れであろう。その間袴田自身が床下を覗いてサジェスションして見せている。口に出さなかったら、指示していないということになるのならパントマイムであれば全て免責になるであろう。なお、「死体の処分」とは何と冷徹な言い方だろうか。 |
| 第4回 | 181 | 「スコップを買うために金をやったことは全然ない。自分は24日の夜同家へ行ったことはない。この点に関する木島の陳述はでたらめである」。
(疑惑)この陳述から察するに、木島は「スコップを買うために宮本から金をもらった」といっているということになる。どちらの陳述が正しいのだろう。 |
| 第4回 | 181 | 「西沢に印刷局を調べる必要があるのではないかと云ったら、西沢は平井ともう一人の男が非階級的のところがあるから一応調べてみたいと云ったので私も同意したが、その後平井は逃亡したとの報告を受け取ったので、他の一人だけ調べさせた。自分としては彼等を殺害する気持ちもなく又監禁殺害を命じたこともない」。
(疑惑)宮顕は、この陳述で、西沢による「大串査問事件」に直接関与していないことを云っているらしい。後の陳述では更に無関係的な言い回しになっている。なお、「自分としては彼等を殺害する気持ちもなく又監禁殺害を命じたこともない」とわざわざ言い為しているが当たり前であろう。そうやすやすと殺されてたまるものか。 |
| 第4回 | 182 | 「凡そ党組織の一部門の反階級的行為に付いての一応の査問ぐらい、当該部門の直接責任者の発意だけでやって何ら差し支えなく、一般的に云って自己の担当部門の被疑者についてその部門の責任者が調べてみることは、党員としての日常的業務とされているのである」。
(疑惑)私は、この陳述を重大視している。一つは、「当該部門の直接責任者の発意だけでやって何ら差し支えなく」という査問万展開理論を開陳していることにある。一つは、「一般的に云って自己の担当部門の被疑者についてその部門の責任者が調べてみることは、党員としての日常的業務とされているのである」は、むしろ警察の「被疑者」管轄方法そのものを横滑りで陳述していることにある。宮本がその筋の者であることを思わず漏らしていると見る。 |
| 第4回 | 182 | 「その意味で、平井の事を仮に私が聞いていなくても、印刷局の責任者である西沢の一存で一応査問してみるぐらいのことは充分西沢の権限内の行為だが、いわんやこの場合一応調べてみる程度の話は西沢から私のほうにもあったのである以上、平井の査問の可否を改めて中央部の全体的会議にかける必要はない」。
(疑惑)これが宮けんの「対スパイ闘争」の実践的手法であるということを確認したい。いわゆる査問事件がこうして黒幕宮顕の指令のした暴走かしていたことがわかる。 |
| 第4回 | 182 | 「私は念のため逸見、大泉、小畑等との中央部の会合で一応報告してあり、この点逸見も予審第16回の陳述で認めていることであり、西沢と宮本の二人で秘密に運んだことでは断じてない」。
(疑惑)この陳述は虚偽であろう。大串の査問は今回の査問直前であり、この頃中央委員会は分裂しており開かれていないと見るのが相当である。逸見の陳述の具体的内容は公開されていないので不明であるが、宮顕−逸見間でそうした遣り取りが為されたことの確認があったというのならあり得る。「西沢と宮本の二人で秘密に運んだことでは断じてない」の「断じてない」の言い回しがなされるところは大抵嘘である。 |
| 第4回 | 183 | 「赤旗号外中の若干の字句を捉えてその後判決書等にも引用され、大沢.波多らの暴虐なる査問を決行するに至った云々と結び付けられているのであるが、これらの語句中の大衆的断罪の解釈については、第3回公判で述べた通りであり、」。
(疑惑)誰が読んでもその通りであろう。それをどう言い訳するのか以下聞いてみよう。 |
| 第4回 | 183 | 「『スパイ全系統を摘発する為、執拗に追撃せよ!大衆的断罪によって戦慄せしめよ!彼等裏切り者を革命的プロレタリアートの鉄拳によって叩きのめせよ』」。
(疑惑)これが赤旗号外の見出しであったことが知れる。宮顕の戦前戦後一貫する党内闘争に戦闘的で対権力闘争に右派的な明白なところである。 |
| 第4回 | 183 | 「(それらの)字句は以上述べた号外内容の全体の比重から云えば、実に些些たるものであり、これは全体的内容と共に虚心坦懐に読めば、極外の事はないのである」。
(疑惑)宮顕にかかってはどうもそういうことになるらしい。 |
| 第4回 | 183 | 「『戦慄せしめ等の言葉は他の階級的文献にも単なる示威的表現としてしばしば使われおるものに過ぎず、『プロレタリアートの鉄拳』というのも、プロレタリアートは労働者階級全体の意であるから階級全体の鉄拳とは、具体的に存在しない抽象名詞であり、」。
(疑惑)ということになるらしい。 |
| 第4回 | 183 | 「赤旗号外中の『政治的偏向、規律の弛緩に対する断固たる鉄槌を下す』云々との自己批判の語句を、文字通り鉄の槌と解釈する余地があり得ないと同様であり、即ちこれらは一般社会の刊行物中司直の為す新聞を叩く疑獄にヨウ懲の鉄槌が下った等の表現と同種の比喩的表現に過ぎない」。
(疑惑)ということになるらしい。 |
| 第4回 | 184 | 「赤旗号外で、波多、大沢の査問を指令したかのごとくみなし、自分の責任としているのは公平を失する。だいたい号外はアッピールするものであって指令すべきものではない。又中央部から指令をしたこともない」。
(疑惑)ということになるらしい。「中央部から指令をしたこともない」ということになるのなら、どこから指令されたのだろうね。 |
| 第4回 | 184 | 「拳銃携帯について、拳銃は護身用として自分は以前から持っていた。‐‐‐査問の為に入手したものではない」。
(疑惑)このたびの査問現場に拳銃を持っていたことを自認している個所である。 |
| 第4回 | 184 | 「最後に結論を述べる。小畑、大泉査問の動機は結局感情対立、派閥の権力擁護、疑心暗鬼から行われたものではない。‐‐‐従って、個人的策動の余地はない」。
(疑惑)もうお分かりいただけるかと思うが、宮顕の云っていることの逆が真相だ。 |
| 第5回 | 187 | 「送致書ことに査問の部分であるが、これは大泉.逸見.木島の陳述を基にして書いたものである。内容は、個人的な感情により査問に籍口して大泉等を殺害せんとしたとなっている。また査問の状況に関しても種々事実に反したヶ所がある」。
(疑惑)この陳述によって、大泉.逸見.木島の陳述が「個人的な感情により査問に籍口して大泉等を殺害せんとした」流れ出されているのがわかる。併せて、宮本が大泉.逸見.木島の陳述調書を読んでいる様が見えてくる。 |
| 第5回 | 187 | 「毛利課長の報告書には、度々の検挙にやって断末魔に瀕した共産党が疑心暗鬼によって内の者をスパイと誤認し、同士討ちをしたるという記載があるが、これは事実に反する」。
(疑惑)何と!特高最高幹部毛利課長の報告書にまで目を通している。ちなみに毛利氏は、「度々の検挙にやって断末魔に瀕した共産党が疑心暗鬼によって内の者をスパイと誤認し、同士討ちをした」とみなしているようである。私は、半分史実を的確にみなしていたと思う。なぜ半分の真理かと言うと、宮顕の方こそが内通者であったと私はみなしているから。まさか毛利氏がそのような発表できるわけないし、小畑のスパイ説には無理があることを思えば同士討ちというのが無難な表現ではなかったか。 |
| 再開公判
第5回 |
187 | 「中川警部が大泉を取り調べる過程において大泉は毛利課長より出る金を貰っておる。これによってこの文書の作成者は大泉の使用者であって、一方ではスパイ大泉をスパイにあらざる態に扱い、他方当時査問を行った党員側の者に対する誹謗をかような形で提起したもので」
(疑惑)ここもすごいことを述べている下りである。これでは、宮顕は、他の被告の取り調べられ状況まで逐一閲覧していることになる。本人は必要があって云っているのであろうが饒舌のあまりとんでもな裏舞台まで見せていることになる。 |
| 第5回 | 187 | 「スパイ政策の暴露を隠蔽すると同時にこれを暴露した者を攻撃する一石二鳥の策である」。
(疑惑)この「一石二鳥の策」は、そういう意味で使われたのではなく、労働者派小畑の殲滅と共産党のイメージダウンの「一石二鳥の策」として機能したのではなかったか。宮顕が「一石二鳥の策」を感知する意識をもっていたことを確認しておきたい。 |
| 第5回 | 187 | 「中川警部は報告書で、宮本は更に訊問に答えぬと報告しているが、大体私の取調べには鈴木、山縣警部等が十数人の部下を指揮しあたり、彼等は私をイスに縛り付け、棍棒で大腿部等を強圧し、帰りには歩けない状態であったが私は答えなかった。彼等は私に手錠足錠をかけ、また冬だと云うのに夜具一切を支給しなかった。しかしそれでも私は云わなかった。云うことがなかった訳ではない」。
(疑惑)これは検挙当日以来の拷問の様子を述べたものと考えられるが、微妙に皆違った弁明となっている。私にはうそ臭い臭いがするところである。それにしても宮顕の奇跡的なタフガイさを自身が自慢たらしくしていることになる。 |
| 第5回 | 188 | 「次に宮川寅雄の警察における陳述について。彼はアジプロ部の会合で『宮本は原稿を妻に書かせた』と述べているがこれは事実無根である。大体党中央部にいる者が自分が引き受けた原稿が書けぬというような事はない。如何なる問題でも、一定の理論的政治的水準があれば書けるのである」。
(疑惑)宮川氏のことは何者かよく分からない。「宮本は原稿を妻に書かせた」という陳述をどういう意味でしているのかも分からない、察しはつくが。後段の「如何なる問題でも、一定の理論的政治的水準があれば書けるのである」とは、何たる口上であろうか。このあたりも臭い言動である。 |
| 第5回 | 189 | 「脳震盪以外の死因については考える必要がないと述べておる」。
(疑惑)これは「村上鑑定書」について述べている下りであるが、同書にはこういう記述はない。つまり、宮本は、「村上鑑定書」を落とし込める為に虚偽の内容を織り込み、それを批判することによって「村上鑑定書」の記述全体の信用を毀損せしめるという悪質な歪曲話法を展開していることになる。 |
| 第5回 | 189 | 「自分が目を覚ました時に小畑は仰向きになって逸見に頭を押さえられ、袴田に足を押さえられていたが、両手を振り回していたので、私と木島で左様の手を一本ずつ押さえていたのである」。
(疑惑)ここは逸見の陳述によれば、先に袴田と宮顕が小畑を捕捉していたとあるところである。しかし、宮顕は、袴田→逸見→宮顕.木島の出番にしている。どちらが正しいのだろう。「両手を振り回していたので、私と木島で左様の手を一本ずつ押さえていたのである」と云うが、なまなかなことでは押さえられないであろう。 |
| 第5回 | 189 | 「その時両手が空いていたのは逸見だけであったが、同人は声を出させないように被せた布が外れるりのを止めていたから、両手の空いていた者は結局一人もなかった」。
(疑惑)この宮顕陳述によると、逸見の手による窒息死の可能性を示唆していることになる。卑怯と思うのは私だけだろうか。 |
| 第5回 | 190 | 「当時大泉を査問中縛られたまま小畑は押入れに入れられていたのであるが、そこの壁を破って逃げようとした当時小幡は手足を縛られていたのであるから壁の穴は結局頭か足で開けたものと思う。従って、仮に脳膜下の出血が事実としてもそのような小畑の努力の際生じたものと考えられ、全ての損傷を査問の際の暴力に結び付けたる宮永鑑定人の断定は疎漏である」。
(疑惑)ここは小畑の身体にあった異変についての釈明の下りである。何と、自損傷であるといい為している。小畑殺害に関与したばかりか、このような言い方で糊塗しようとする宮顕を許せるだろうか。 |
| 第5回 | 190 | 「表皮剥脱も、彼は身体を制縛されていたので、そういう努力によって小畑が身体を振りまわすとかあるいは押入れから出てくる時多少敷居でこするということもあるかも知れないが、すべてその際の暴力によるものと断定できない」。
(疑惑)ここも小畑の身体にあった異変についての釈明の下りである。この詭弁家には何を言っても証拠を見せても、どうにでも切り抜ける重宝な口を持っているのが分かる。 |
| 第5回 | 191 | 「なお鑑定書にある小畑の爪が非常に短いという点についてであるが、彼は日頃爪を噛む習慣があり、時には噛んで血がにじましていたことがある。従って、爪の短いことは査問には関係無い」。
(疑惑)ここは私も信じられないところだが、鑑定書中には、小畑の指先の爪が深くせん断されていた模様を記している。つまり指爪リンチの可能性を示唆しているのであるが、リンチ事件の関係者のいずれよりもその陳述はない。思うに、実際のリンチは明らかにされているよりなおひどいものであったのではなかろうか。宮顕の小畑は爪を噛む癖があったなどという弁明は噴飯ものである。 |
| 第5回 | 192 | 「その鑑定書を読して見ると、小畑はショック死を起しやすい体質であるということが分かる。即ち、実質性臓器に脂肪沈着あり、胸腺残存しおり、ショック死を起しやすい体質であることが同鑑定書の‐‐‐記載で明らかである。小畑の心臓に栗粒大の肥厚斑数個あるとの記載があるが、これは梅毒性体質の特徴で、脳震盪類似の病状によって急死することがあると法医学者も説いている」。
(疑惑)鑑定書を読まずに宮顕の陳述を聞いているとなるほどと思う話術である。鑑定書には、小畑がそのような体質であったとは一言も述べていない。「ショック死を起しやすい体質であることが同鑑定書の‐‐‐記載で明らかである」は少しも明らかではない。あまつさえ、小畑が梅毒であったとも受け取れる言い方をしているが、私は怒りを通り越す。 |
| 第5回 | 193 | 「苦悶らしい声も出さず、休息の為横になろうと物に寄りかかろうとしていたのである。のみならず、その間隙を見て逃亡差へ計画する余裕を持っていたのである。査問は交互にやったので、押入れにいる間は横になれて休息が得られたと思われる」。
(疑惑)査問した側の宮顕は疲れてウトウトしていたと先に述べているところは見てきた。ここで、査問された側には疲れなぞなかったであろうと云い為している。馬鹿も休み休み言い給えといいたくなる。 |
| 第5回 | 193 | 「従って、古畑鑑定人の云う著しい疲労困憊(こんぱい)はありえない。また精神的苦痛もない。暴行脅迫をした事もないからそれに基づく精神的苦痛もない。強いて云えば、小畑はスパイたる事を暴露されたので、それが苦痛であったと思われるぐらいのものである」。
(疑惑)査問に関わる暴力全面否認の陳述の下りである。ナイナイづくしであるが、こういう弁明を聞くと私は胸が悪くなる。 |
| 第5回 | 193 | 「死体の外傷を暴行に基づくものといっているが、それは違う。これは前述の如く小畑自身が押入内にいた際壁に穴をあけるほど種々逃亡に努力している関係なんかは全然無視して軽率に外傷即暴行としている点は、前鑑定者の傾向を踏襲している」。
(疑惑)世に卑怯な言い方というのがあるが、この云いかだが典型であろう。小畑の死体にあった損傷は押入内の自損の面も考慮せねばならないという言い方で、外傷即暴行ではないと云い抜けしようとしている。暴行がなかったとは云ってないが、そのように受け取られるよう詐術している。 |
| 第5回 | 193 | 「査問は静粛に行い、暴力の使用は極力注意した。手足を縛ったままで彼等を押入から出入りしたから若干の影響は手足に残ったかも知れぬが、特に傷らしいものは見ていないし又予審終結決定に記載してあるような暴行は加えていない。従って、外傷を加えられた暴行と云う鑑定は妥当でない」。
(疑惑)ここも卑劣極まる言い方をしている。宮顕は、暴行を加えていないとは云っていない。云われているような暴行を加えていないという云い方で、暴行なかった説に導こうとしている。ちなみに他の当事者の袴田以下4名は程度の差こそあれ皆当人が暴行を加えたことを陳述している。本人が認めていることを宮本が躍起になって否定しているという構図である。おかしなことだろう。 |
| 第5回 | 193 | 「法医学によると、ショック死は激論しただけでも又ちょっと指なんかで触っただけでも特異の体質の者には起こる場合があるというから、ショック死であるとすれば死因は体質に置くべきである」。
(疑惑)こういう言い方をする御仁には近づかないほうが賢明である。激論もしない方が良いということになるな。 |
| 第5回 | 194 | 「小畑の場合は心臓は人並みより大きく、心臓に脂肪沈着が多く、又心臓に肥厚があったという点から内因性急死としての心臓死も考えられる」。
(疑惑)ここまで云うのなら、正当防衛論で争ったりせずに、堂々と最初から特異体質死であったと指摘して例証していけばよいだろうに。 |
| 第5回 | 194 | 「古畑鑑定人は、ショック死と断定したから、他の死については考察の必要がないと云うが」。
(疑惑)ここは虚偽と歪曲話法である。古畑鑑定書は、外傷性ショック死と鑑定し加えられた暴行による疲労、食事が与えられなかったことによる消耗等々をその要因に推定している。「ショック死と断定したから、他の死については考察の必要がない」などとよくも言い換えれることだなぁ。 |
| 第5回 | 194 | 「結論として、小畑の死因は同人の体質の特異性に主因を置くべきであって、自分は小畑の体質の脆弱が死因なりと考える」。
(疑惑)こうして黒を白と云い含めてみたが、どれだけ成功しただろうか。 |
| 第5回 | 195 | 「(荻野は)そして昭和8年末私等を売って自首の形で検挙された」。
(疑惑)荻野調書が公開されていないので具体的内容に迫れないが、立花氏の研究によると、荻野も又査問されようとしてしていた恐怖から警察に自首したようである。宮顕は、小畑死亡により査問を一服したのではなく、次から次へ政敵ないしは不服従者狩りに狂奔しようとしていたことが判明する。 |
| 第5回 | 195 | 「彼は、中央部では昭和8年10月頃スパイ対策が論議され、スパイの嫌疑があれば査問し証拠が上がれば足腰を叩きのめす事に決定したといっているが、当時中央部におらないから左様な事を知る筈がない。これは彼の憶測なのである」。
(疑惑)これも否定になっていない。実際にどのような討議がなされたのかは分からないが、もし決定されたのであれば当然連絡が通達される。「中央部におらないから左様な事を知る筈がない」は為にする批判であろう。 |
| 第5回 | 195 | 「昭和8年9月頃東京市委員会書記局会議は三船の殺害を決定したと述べており、又私がその構成員であったようにいっておるが、私は当時書記局にはいない。袴田の予審第14回調書、木島の予審第13回調書でも、三船の殺害を決定したことはないとはっきり述べている」。
(疑惑)ここも子供だましである。三船査問の経緯に宮顕の関与は袴田.大泉によっても明らかにされているところである。「私は当時書記局にはいなくても」、その上部組織の中央委員会にいただろうが。宮顕がその指令を出していたのと違うのかな。後段の陳述で、宮顕が袴田、木島の各調書に目を通していることが分かる。ちなみに、「三船の殺害を決定したことはないとはっきり述べている」ことはない。 |
| 第5回 | 196 | 「小畑、大泉の査問事件の原因は委員長争奪戦であるということを袴田から聞いたと述べているが、袴田は左様なことを申した覚えはないと明言しており、又荻野自身も後に自分の憶測であったと述べている」。
(疑惑)ここも宮顕の饒舌により思わず漏洩されている貴重なところである。一時的にせよ、荻野は「査問事件の原因は委員長争奪戦であるということを袴田から聞いた」と陳述していたようである。 |
| 第5回 | 196 | 「なお彼は当時逸見、木島らと会ったら態度が一変しておったとか、小畑はスパイでないと云ったら、宮本は『ハット』したような態度であったとか種々述べているが、それは皆彼の嘘で、当時彼は大泉、小畑はスパイだといっており、又自分が査問を受けることを観念していたともいっている。これ即ち彼がスパイたる証拠である」。
(疑惑)ここは意識的なすり替え話法をしている。「なお彼は当時逸見、木島らと会ったら態度が一変しておったとか」のところの「逸見、木島らと会ったら」が違う。ここは宮顕と会ったらと言われているところである。こういうすり替えをなぜするのだろうか。この公判陳述自体が後世の者を欺瞞しようとして作為的に為されているとしてしか考えられない。後段で、荻野もまたスパイと断定されたが、してみると宮顕に迎合しない者は皆スパイにされているのが分かる。 |
| 第5回 | 196 | 「予審第8回で、宮本、袴田が何時もスパイ問題については殺害その他強硬な主張をしていたと述べているが、結局それは何とかして不利な材料を提供しようとする意図にでた憶測であって」。
(疑惑)ここも宮顕の饒舌により思わず漏洩されている貴重なところである。これによれば、「宮本、袴田が何時もスパイ問題については殺害その他強硬な主張をしていた」という恐らく史実を知らされる。 |
| 第6回 | 199 | 「私は納得がいかなかったのであるが、自分は口述が始ってからは更に答えていない。結局私が打ち合わせと思って述べた事が答えとして記載されておるのである」。
(疑惑)ここは何とかして一切の陳述を拒否してきたことを述べようとしている下りであるが、「結局私が打ち合わせと思って述べた事が答えとして記載されておる」と楽屋裏を見せている。 |
| 第7回 | 202 | 「(三船が)スパイと断定した事はない。又委員は大泉一人が選任されたが家がないというので、自分が家を心配してやったのである。又私の知人を警備につけてやり、査問は大泉一人で当たったのである。警備につけた男と私が連絡があったような事はない。私が委員であったが、当日になって都合悪い君等でやれと逃げたようなことはない」。
(疑惑)その場その場をうまく語っているが、この陳述は、先の第5回公判での「私がその構成員であったようにいっておるが、私は当時書記局にはいない」として無関係を装った陳述と整合しない。事実は、査問のための「家」と警備員まで斡旋していることがここで明かされている。警備員が何者か臭いところでもある。 |
| 第7回 | 202 | 「大泉は宮本が三船を知らぬからと私を排斥したほどで、私が委員であったようなことは更になく、私は家を心配してやっただけである」。
(疑惑)宮顕は一体何をいおうとしているのだろう。この陳述とおりとすると、知らない三船をスパイとして査問しようとしており、委員でないのに家とか警備員まで世話している。それ「だけ」のことにしては充分な関与を物語っているではないか。 |
| 第7回 | 203 | 「大泉が三船を査問した経過は私の下で家を心配し査問に立ち会った男から報告を受けたが、それによると、訊問はルーズでうやむやな訊き方でインチキであったと云うことになっている」。
(疑惑)何と、三船査問の報告まで受けているではないか。 |
| 第7回 | 203 | 「大泉は、三船を殺害しなかったことに付き、責められたというが、左様なことはない」。
(疑惑)ここも宮顕の饒舌により思わず漏洩されている貴重なところである。宮顕が「左様なことはない」とか云うところは、その逆に受け取れば史実かと思われる。 |
| 第7回 | 203 | 「逸見の記録に、三船の査問は大泉が委員長、宮本は補佐であったとあるが左様なこともない」。
(疑惑)ここも逆に受け取ればよい。 |
| 第7回 | 203 | 「大泉はスパイを断定すれば殺害してしまわねばならぬと述べているが、でたらめである。スパイと認定されても殺害する必要はなく、除名さえすればよいことは従前述べた通りである」。
(疑惑)大泉陳述が正確なのか、宮顕のそれが正確なのか、もちろん私は宮顕陳述の逆が正しいと読み取る。 |
| 第8回 | 206 | 「大泉はスパイであり、逸見、木島両名は当時の反発的感情と党の全体的方針に関する理解が不十分であった為事件の観察を歪めたと思う」。
(疑惑)この御仁にかかったら、イエスマン以外は木っ端に低脳扱いされることが分かる。先に逸見を「白テロ調査委員会の委員長」であったといっているのに、そういう者を「理解が不十分であった為」などとおとしこめると、「白テロ委員会」のいい加減さにまで論が及ばないだろうか。 |
| 第8回 | 206 | 「逸見、木島らは査問当時は真面目であったが、その後の陳述を観ると、事件の観察を歪め、我々からいえば結局右両名の陳述は大泉のスパイとしての陳述と異なるところなしというべきである」。
(疑惑)査問事件の真相を語るのに、「真面目」であろうがなかろうが、大泉がスパイであろうがなかろうが、実際を語ったら凡そ同じような陳述しているということでしょうが。宮本の暴力査問なかった論こそ「歪め」ているのでしょう。 |
| 第8回 | 207 | 「彼(大泉)は、警察に留置中優遇を受けたので、同房者にスパイたる正体を隠す為ハンストまでやり、スパイたることを努めて隠していたが、予審でスパイの身分を出し始めたのである」。
(疑惑)この陳述によると、宮顕は、大泉の獄中の様子まで掌握していたようである。他の被告全ての調書を読むのはいわずと知れて獄中の様子まで知り尽くしているとは、何と言う地獄耳だろう。 |
| 第8回 | 208 | 「個人的勢力も争いについては、逸見も述べているが、大泉の陳述はその典型的なものである。‐‐‐彼等スパイである立場から観ればそのような結論になるのであって、その陳述を取り上げる価値はない」。
(疑惑)逸見も大泉もこのたびの査問を「個人的勢力争い」として観ていたようである。さすがに、宮顕のほうこそスパイ臭いという認識には至っていない。 |
| 第8回 | 209 | 「木島が査問開始当時いたとか、誰かに斧で頭を殴られて気絶したとか、宮本が斧でコツコツ殴りながら訊問したとか、歯が抜けたとか、応答しても発言の機会を与えなかったとか実にでたらめの事ばかり述べている。しかも、一応訊問の形態では、宮本が一番多くやったと云い、訊問が系統的に行われたことを無意識裡に裏書している」。
(疑惑)大泉陳述に過剰陳述があるのは確かであるが、逆に云うと小畑の方にこそ暴力が集中していたのではないかと思われる。後段の「訊問の形態では、宮本が一番多くやったと云い」の部分は事実であったであろう。系統的に行われようが行われまいがその事実を変えるものではない。 |
| 第8回 | 209 | 「査問の経過に関する陳述が予審公判で相違している。これは事実を歪め、悪印象を与えいかにひどいことをされたかということを訴えんとする為の陳述である」。
(疑惑)それを云えば全員が多少なりとも陳述を変えているが、それは別の角度から見直したことによってとか様々な理由によってであろう。 |
| 第8回 | 210 | 「小畑の死亡の状況に関しても宮本が小畑を蹴ったら、小畑が声を立てたと述べているが左様な事はない。自分が活を入れたときのことを付加してそういったと思う」。
(疑惑)ひどい話だが、「左様な事はない」とあるので実際にはあったのであろう。 |
| 第8回 | 210 | 「当時査問が打ち切られた際、彼は私に向かってどんなことをされても仕方ないのに別条のこともなく有り難いと手を合わせ拝んでいるのであるが、陳述では以上の如きでたらめさへ云っている」。
(疑惑)この言い回しは饒舌により当時の査問の程度を窺わせるに充分である。「どんなことをされても仕方ないのに」という言葉の裏には何が込められているのだろう。後段は、あの時命を助けてやったのにその恩を忘れて云々の恨み節になっている。それとここで確認すべきは、大泉の査問はさしみのつまであったと受け取れることにある。 |
| 第8回 | 211 | 「結局査問の原因状況等に対する彼(大泉)の陳述は意識的に歪曲せられたもので価値のないものである」。
(疑惑)宮顕は何たる事を言うのだろう。大泉は査問された当事者であり、その当人の陳述が価値がなければ、一体価値のある陳述を為しえる人がいなくなるではないか。 |
| 第8回 | 212 | 「彼(木島)の陳述の特徴であるが、彼は小畑、大泉の査問にあたっては委員ではなく単なる見張りであった。従って、彼にどんな意図があろうと何らの権限はなく、従って彼がなんと云おうとそれは核心に触れたものではない。しかも彼の陳述は警察より公判にて矛盾を極めている」。
(疑惑)何という言い方であろう。査問初日の夜木島もいたその場で深夜に査問していることを宮本も自認しているではないか。「単なる見張り」の域を越しているでしょうが。木島が権限があろうがなかろうが木島なりに見たことを陳述していることがなぜ「核心に触れたものではない」となるのか。このたびの査問にはそれほど裏があるのか。 |
| 第8回 | 212 | 「元来彼は政治的水準が低く、問題を根本的に把握できない男であり、且つ彼は単純で粗雑な性格である。それがかような不正確な陳述となり、又彼の単純な性格を警察で利用され誘導されたとも観られる」。
(疑惑)云えば云うほど我が身に及ぶはしたない物言いである。もしそれが事実として、そういう木島をなぜ使ったのだろう。小畑死亡後に中央委員候補に格上げしたのは誰なんだ一体!。便利な使い捨て要員としてのみ使いつづけていた宮顕の責任をも自動的に明らかにしているであろう。 |
| 第8回 | 212 | 「彼は党活動をしておる頃は大泉、小畑をスパイと確信し、それ以外の原因などは全然考えなかったが、その後警視庁で聞いた所によると、査問の原因はインテリ対労働者の対立であったことが分かったと述べているが、それは検挙されて警視庁へ来てから後他から云われそう考えるようになったものである事は明らかである」。
(疑惑)木島は、その後よくよく考えると小畑の査問は宮顕の奪権闘争であったと気が付いたが、宮顕は警察の入れ知恵だと述べている。「その後警視庁で聞いた所によると、」とあるが、完全黙秘の宮顕にしてはいろいろ警視庁で情報得ていることが分かる陳述である。 |
| 第8回 | 213 | 「結局木島は基礎的な理論の把握がない為、いい加減な陳述をしたものであって、その陳述は何ら証拠のないものである。要するに査問の原因に関する木島の陳述は全然根拠のないことである」。
(疑惑)根限り木島を使って査問させ続けてきた宮本のこれが根本的な木島観であったと思われる。 |
| 第8回 | 213 | 「要するに彼は査問の間中、上部からアジられたと云っているが、左様なことは無い。大体非合法活動では党員は余分なことは云わないことになっており、又他を誉めたり煽ったりするようなことは言わない。用件だけしか云わないのである」。
(疑惑)これによると、木島は、「査問の間中、上部からアジられたと云っている」ことになる。上部とは、宮顕.袴田.秋笹のことを云う。左様なことはないとあるので、そのとおりだったのであろう。 |
| 第8回 | 213 | 「私が家探しに行くにあたってピストルの撃ち方を教え、官憲に見つかった時の注意をしたとか述べているが、木島は前からビストルを持っていたのであるから」。
(疑惑)この陳述によると、当時党内で宮顕.袴田.木島がピストルを持っていたことになる。こうなるとピストルの出所を詮索して見るのも興味が涌く。 |
| 第8回 | 214 | 「12.23日夜中袴田がいたと述べているが、それは全く無根のことで袴田はその夕帰宅してアジトにはいなかったのである。大体一定の場所に一定の時或る人間がそこにいたかいないかということは事件を判断するに付き根本問題である。それがはっきり判らないもようでは他の陳述も信用することは出来ない」。
(疑惑)しかし、そういう木島を特攻隊員的に扱っていた者の責任はどうなるんだ。それと「事件を判断するに付き根本問題がはっきり判らないもようでは他の陳述も信用することは出来ない」というのなら、宮顕のいうことなんか全然信用ならないではないか。 |
| 第8回 | 214 | 「宮本が薪割りで小畑の首をつついていたとかいうが左様なことは更にない。小畑の死亡当時の状況に関する陳述も不正確であって、これは従来の供述で明らかであるが、彼は私が小畑の頭の上に乗ったと云っているが左様なことは断じてない」。
(疑惑)ここも逆に取ってみよう。 |
| 第8回 | 214 | 「当時そのアジトは発見されるおそれがなく安全だったので死体の処置については何ら決定もしなかったのである。又25日の昼に宮本から死体の処置をよろしく頼むと云われたと述べているが、左様なことも無い」。
(疑惑)ここも逆に受け取ろう。 |
| 第8回 | 214 | 「宮本からスコップを買うのを頼まれたと云っているが左様なことは無い。又25日昼宮本がアジトへ行ったと述べているが、それも嘘で、25日夜であることは木俣の陳述で明らかである」。
(疑惑)木俣の調書にも目を通していることが分かる。 |
| 第8回 | 215 | 「小畑死亡後私等は階下におり、木島は二階にいたのであるから、階下で私等が党の方針に付き協議した内容は木島は知る筈もない。それを述べているのは推測によるものといわざるを得ない」。
(疑惑)木島が二階にいることをここで認めているということは、木島は警備員で使われていただけでないことが確認される。それと、袴田陳述では二階で引き続き相談が為されたとある。いずれにせよ、木造のアパートのことであるし、一階、二階で声が聞こえなくなるという事もないであろう。 |
| 第8回 | 215 | 「小畑を殺したのは当然であると後で皆が云ったと云うが、それも全く嘘で、公判では皆が十分小畑の調書も取れず残念だったと云ったと訂正している」。
(疑惑)後段の文意が読み取れないが、宮本が予審調書、公判調書の皆に目を通しているのがわかる。 |
| 第8回 | 215 | 「彼は党の方針は理解していない、又機関紙も見ていない。昭和8年来機関紙にスパイ挑発問題を系統的組織的大衆的に処理するということを発表してあるのに彼はそれを知らない。専ら曲解した事実を述べている」。
(疑惑)ここも饒舌の余り墓穴を掘っている。そういう「党の方針を理解していない、又機関紙も見ていない」木島を査問警備員に利用し、更に打ち合わせ違反のまま査問会場に引き入れていた宮顕自身の責任も問題になるであろう。木島をノータリン扱いすればするほどそういうことになる。 |
| 第8回 | 215 | 「大泉、小畑らを査問するのは、即ち殺害の意思なりと推測したと述べているが、これも彼が機関紙等により党の方針等を理解していない為である」。
(疑惑)ここは、木島に命じられた査問用具の内容次第によって木島の陳述通りか、宮顕の陳述通りかが判明するであろう。 |
| 第8回 | 216 | 「彼は予審第30回で、党は街頭連絡が活動の大部分で、スパイ対策に狂奔しておりましたと答えているが、非合法党の活動形態が街頭連絡によることは何処の国でも当然であり、又狂奔とは一定の方針なくして右往左往することであるが、それは木島の低い水準からそう考えるに過ぎない」。
(疑惑)ここもひどい陳述である。当の木島が「スパイ対策に狂奔」さされていた事実を述べているのに、「木島の低い水準からそう考えるに過ぎない」だと。そういう者を党中央委員候補に任命した自身の責任はどうなるのかね。いずれにしても、木島は、党内の戦闘的党員に向けての使い捨てのテロリストにさせられていたことに気づいて悔恨した様子を陳述していることになる。 |
| 第8回 | 217 | 「逸見の陳述も本質的に云えば大泉、木島の陳述と同様である。要するに事実を歪曲しているに過ぎない。彼の上申書でも云っているが如く致命的の瑕疵を犯した陳述ということができる。要は全体的に観察して事件の真相を把握していない」。
(疑惑)宮顕にかかっては事件の当事者であっても、「事実を歪曲」、「事件の真相を把握していない」ことになるようである。宮顕によれば逸見は白テロ委員会の委員長であるが、その委員長が見たままを語ったら、「事実を歪曲」、「事件の真相を把握していない」となるのではたまらない。要するに宮顕以外は全て真理を見通せないということだな。 |
| 第8回 | 217 | 「彼は上申書等では自己を結局傍観者的なものとして強調しているが、彼自身白テロ調査委員会の委員長であり、その位置はスパイ挑発に対する最重要部署にいた人間で有り、組織的には問題提起の責任者であるのみならず、予審の彼の陳述でも判る如く、総会においては彼が査問の開催を提議しておるというのであるから、如何なる意味においても彼を傍観者的なものと見ることはできないのであるから彼の陳述は公正とは云えない。徒に真相を歪曲するに役立つのみである」。
(疑惑)ここは詐術を多用している。逸見を「白テロ調査委員会の委員長」といってみたり、「総会においては彼が査問の開催を提議しておる」様子はない。袴田陳述でも明らかにされているが、嫌がる逸見を手を変え品を変え巻き込んだ経過が明かされている。この宮本の孤高の「真相」はどういう背景からうみだされるのであろうか。 |
| 第8回 | 217 | 「逸見は、予審の第13回以来査問の原因は急進派と非急進派との争いであるといっているが左様な両派は存在しない。‐‐‐又中央部内の感情の対立であるとも云っているが、左様な事実のなかったことは今までに度々述べたとおりである。いずれも逸見は事件を率直に見ていないから左様なことを陳述したものである」。
(疑惑)宮顕が「中央部内の感情の対立であるとも云っているが、左様な事実のなかった」とは、あったのはスパイ派とその摘発派の対立であったということであろう。 |
| 第8回 | 218 | 「要するに逸見の査問原因に関する陳述は解釈が通俗的であるから人の耳に入りやすく、人に信用されがちであるが、党活動の面からいへば事件を曲げたものであり、妥当でないことは多言を要しない」。
(疑惑)無茶苦茶な話であるが、当事者の逸見がありのままを陳述していることに対して、「通俗的であるから人の耳に入りやすく、人に信用されがちである」が「党活動の面からいへば事件を曲げたもの」になるらしい。党活動は余程ヘンテコリンな見方が強制されるらしい。 |
| 第8回 | 218 | 「それは違う。むしろ実状の経過は逸見ら組織部会に参加した人たちが小畑の不審行動を目撃してそれを一契機として初めは宮本に隠していたが、結局逸見を初め白テロ調査委員会の人々から中央部に正式に提起されてきたものである」。
(疑惑)ここは、逸見が巻き込まれたのか宮本が巻き込まれたのかという探索個所である。宮顕は、小畑の蘇生に尽力したのは俺だ、死体遺棄を命じたこともない、もともと査問は逸見を委員長として提起されたもので自分こそ巻き込まれたのだといっていることになる。「中央部に正式に提起」なぞとどの口から云っているのだろう。中央部の最高幹部を査問するのに中央部に正式に提起も何もなかろう、宮本しかいないではないか。その宮顕が最後に決断を迫られたと云いたいわけか。 |
| 第8回 | 219 | 「逸見自身威嚇用の器具の準備やテロについての協議なんか全然なかったと公判で述べているのでも明らかである」。
(疑惑)ここは、詐術である。逸見が「威嚇用の器具の準備やテロについての協議なんか全然なかった」と述べているのは、関知しないままに道具立てされていたことを指摘している。宮本は、そういう道具がなかったことを云わんがためにこの陳述を利用している。 |
| 第8回 | 219 | 「宮本が議長格であったといっているが、これも秋笹が指摘している如く不実である」。
(疑惑)ここもひどい話だ。小畑が体質的なショック死であるというのなら、自分が議長格でやったことを認めれば良いではないか。「秋笹が指摘している如く」と云っているのも卑劣な利用の仕方である。袴田も木島も大泉も議長格宮本を認めているのだから、都合の良いところだけを引き出していることになる。 |
| 第8回 | 219 | 「大体彼等を査問会場に連れて行くと、査問に付することを宣言した後直ちに拘束して身体検査が為されたのであるから、このピストルは1500m飛ぶなどと云うて威嚇するなどの悠長な言動は為しえない。宮本が査問委員長格であったと云うのも秋笹も指摘している如く逸見の歪曲策法の一つである」。
(疑惑)逸見陳述の全容は開示されていない。そういう陳述をしていることが逆に知れる。後段の「歪曲策法」とあるからには、「歪曲策法」がどういうものかについて宮顕が自認していることになるのが興味深い。 |
| 第8回 | 219 | 「査問においては合議対等性の立場が採られた。木島が硫酸をつけたという事もない。又逸見が誰がどうしたとか一々記憶しないがといいつつ彼をあまり宮本らが散々殴ったり蹴ったりしたというのも、自己を穏健であったと強調せんとする同一策法である」。
(疑惑)宮顕は、手縄.足縄.猿轡.頭から首までの覆いについては自認している。それでいて「査問においては合議対等性の立場が採られた」とはどういう了見だろうか。後段で、逸見が「彼(小畑)をあまり宮本らが散々殴ったり蹴ったりした」と陳述していることが知れる。 |
| 第8回 | 219 | 「私は特に周囲への顧慮を念頭に置いており、かかる混乱を導く行動はとらなかった」。
(疑惑)宮顕が、そうした用意周到な気配りで抜かりなく査問していこうとしていたことが判る。してみれば、小畑の逃亡行為は、そのシナリオを狂わしたことになる。私は、小畑の最後の革命家魂が為せた技であったと見る。 |
| 第8回 | 219 | 「逸見は秋笹が上がってきて小畑の様子を見て、殺すのは反対だといったら、宮本がなぜかと反論したというが、殺す殺さないの問答は更になく、小畑の顔が覆いで見えず、未だ何が起こっているか判らなかった時だから、秋笹のこれはいかぬとの言に対して何の意味か反問したに過ぎぬ。故に様子が判るや直ちに蘇生に努めているのである」
(疑惑)さて、どちらの陳述が正しいのだろうか、多言を要しない。 |
| 第8回 | 220 | 「死体の処分についても袴田の提議があったと云うが、かかることはなく、これも秋笹及び公判の袴田の陳述の示す如く議題に上がらなかったのが真相である」。
(疑惑)宮顕の堂々たる虚偽陳述である。小畑の死体遺棄については袴田自身が認めていることである。当の本人が認めていることを宮顕が否定してどうするんだろう。もっとも提議というのではなく、階下の畳を上げてここにどうかという仕草をしているのであるが。これを提議といわずして何というのだろう。宮顕は、「議題に上がらなかったのが真相である」という言い回しでこの経過を隠蔽しようとしている。 |
| 第8回 | 220 | 「要するに彼の陳述も自己を有利に導かんが為に事件を歪曲するに終始した陳述であることは大泉の陳述と何ら異なるところなくこれを取り上げる価値はない。‐‐‐結局個人的感情により事件を歪曲し自己の立場を有利ならしむる事に終始したもので、真相を観察できなかったものというべきである」。
(疑惑)これは宮顕にそっくりそのままお返ししたら的確なのだが、こういうおのれのことを相手を罵倒する為に言う逆話法はどういう神経なら可能なのだろうか、そこが分からない。 |
| 第9回 | 223 | 「秋笹の陳述には三つの特徴がある。第一はスパイ挑発形態等これに対する党の方針に関する彼の見解は妥当である事、第二は宮本、逸見以外の者即ち大泉、木島、袴田等は全部スパイであるように思っていたと述べておるが、木島、袴田らをスパイなりと観ているのは誤認であること、第三は彼の陳述は心境の動揺期に行われたものゆえ事件に対し確固不動の認識に欠けていることである」。
(疑惑)こうして、宮顕にかかっては本人以外の者は全て批判の対象になる。注意すべきは、批判されている者達は事件の当事者であり、それぞれが実際にあったことを陳述しているにも関わらずここでは「確固不動の認識に欠けている」と批判されていることである。仮に宮本を落としこめる為の虚偽陳述であったとしても、あまりにも具体的過ぎる陳述内容になっている。わざわざそのような絵空事を案出できるだろうか。 なお、ここは注目されるべきことが述べられている。秋笹はその後袴田、木島の方がスパイであったと気づいたと陳述しているようである。当然その黒幕宮本にまで嫌疑が及ぶであろう。秋笹はこの後発狂させられ獄中死する。その伏線となる陳述であるように思われる。 |
| 第9回 | 223 | 「暴力行使予定の下に器具の準備等をする協議のなかったこと、宮本はやり過ぎたようなことはなかったこと等を予審第24回公判等で明らかに述べている」。
(疑惑)問題は、協議されぬまま実際には調達されていた点につき誰の指示で為されたのかの解明にこそあろう。協議がなかった=査問器具がなかったにはならない。「宮本はやり過ぎたようなことはなかった」とは、「やり過ぎではないところまでは為された」と理解するのが自然で、「暴行がなかった」にはならない。 |
| 第9回 | 224 | 「査問の状況に関して逸見は開始にあたって一週間くらい監禁すると申し渡したと云っているが、秋笹は直ぐ引っ越すつもりでいたので左様なことはなかったと云っているが、拘束の申し渡しはして彼等も承諾したが、特に期間については改めて云わなかったのが本当である」。
(疑惑)結局何が云いたいのだろう。秋笹の「直ぐ引っ越すつもりでいた」陳述は小畑死亡後の判断であろうから混乱を招く文章を意識的に挿入していることになる。 |
| 第9回 | 224 | 「彼は死因に付き絞首ではないかと思うと述べているが、これは彼の想像と思う」。
(疑惑)小畑死亡原因を絞首によるとすれば逸見の行為が直接の契機になる。「これは彼の想像と思う」と云いながら、「左様なことはない」と云わないのが宮顕らしい。 |
| 第9回 | 224 | 「死体の処分に関しても全員で協議したことはなく自分と木島が相談してやったと一貫して陳述をしている」。
(疑惑)宮顕の嫌らしさがにじむところである。最高幹部の袴田が床下を覗いている。指示はしなかったにせよ、それを咎めなかったとしたら充分な教唆であろう。実際に死体遺棄したのが秋笹と木島だから責任はその者にあるとしたら、最高幹部は常に免責されるであろう。 |
| 第9回 | 224 | 「上申書にプロレタリアートの鉄拳云々を鉄拳制裁を加える如く解したヶ所があるが、彼の誤解であったと、プロレタリアートの強固な意思という意味に解すべきである」。
(疑惑)宮顕にかかったら万事がああいえばこう云うにされてしまう。何やらプロレタリアート独裁を執権と言い換えた経緯とそっくりだ。 |
| 第9回 | 225 | 「要するに彼は経歴も古く理論的水準も高く党の全体的方針をよく理解していたが、思想的動揺期であった事と客観的態度に欠けるところがあった為その陳述に若干の妥当性を欠く個所が認められる」。
(疑惑)宮顕にとって秋笹陳述はいろいろ都合の良いところがあるが、「思想的動揺期であった事と客観的態度に欠けるところがあった為」袴田.木島ラインをスパイ視しているところが不正確といっていることになる。 |
| 第9回 | 225 | 「(袴田の)査問状況に関しては不正確な陳述がある。上告審までの間にかなり訂正の跡は見えるが、なお根本的に是正されていない」。
(疑惑)何と宮顕は、「上告審までの間にかなり訂正の跡は見えるが」と、恐らく予審調書の書き換えの経過まで熟知していたことが分かる。こういうことが果 |